HMOsと2'-FLの中国法規制現状および認可取得の見込み
Source: CIRS

この数年、ヒト母乳オリゴ糖(Human milk oligosaccharides,HMOs)は乳品の「貴族」として、皆様に知られます。科学技術の発展および相関研究の深化に伴い、その重要性も段々に認められます。HMOsは、母乳中の第三位の固体成分として、乳糖と脂肪だけより低くて、母乳に天然存在する特別的な混合炭水化物です。HMOsは有益菌の成長を促進し、体に特別的な栄養価値を提供できることが数多くの研究に証明されます。ですので、「HMOs配合」の乳幼児調製食品を研究開発する国内外企業が多いです。

HMOsが食品栄養分野にての重要性が段々に証明されることに伴い、その代表成分としての「2'-フコシルラクトース(2'-FL)」は既にEU、アメリカ、オーストラリア・ニュージーランドに「使用認可」を取得し、商業化になりました。ただし、中国において、2'-FLはまだ「使用認可」を取得していません。2021年後半年、中国国家衛生健康委員会(NHC)政務大庁は総計3件の2'-FL(中に、合成法由来は1件)の登録申請を受理しました。新たな機能性成分として、2'-FLの法規制認可現状、および産業化研究応用の未来は如何でしょうか。中国での「認可取得」は大体何時でしょうか。ここに、CIRSの見解を紹介します。

1. 2'-FLとは

2'-フコシルラクトース(2'-FL)は中性のフコシル化ヒト母乳オリゴ糖であり、HMOsの約31%(モル分率)を占め、含有量は0.06~3.93 g/Lとなり、ヒト母乳中に相対存在度が一番高いオリゴ糖です。その組成単体はフコース、ガラクトース、グルコースとなります。

英語名称:2'-Fucosyllactose,2'-O-fucosyllactose(2'-FL)

化学名称:α -L-pyran fucosyl -(1 2)-β -D-pyran galactosyl -(1 4) -D-glucopyranoside

2'-FLの構造式:


(中に、はフコース、はガラクトース、はグルコース。画像由来:Nutrition Reviews)

2. 2'-FLの国内外法規制認可現状

2'-FLはヒト母乳に含有量が一番高いオリゴ糖であり、アメリカFDAおよびEUより乳幼児調製粉ミルク、一般食品、サプリメント、医療食品に使用認可されたHMOsの一種です。また、オーストラリア・ニュージーランドも微生物で発酵製造される2'-FLの使用を認可しました。

  • アメリカ

現時点まで、アメリカ食品医薬品局(FDA)に「一般に安全と認めらる(GRAS)」として認可された2'-FL(単一成分または混合製品)は多いです。その使用範囲は乳幼児調製粉ミルク、焼き菓子、乳製品、飲料などの食品カテゴリーとなり、配合量は申請企業によって違います。

画像由来:アメリカFDA

  • EU

欧州委員会(EU) 2017/2470法規に基づき、2'-FLは既に新食品原料(Novel Food)として認可されました。その製造工程は合成法、遺伝子組み換え大腸菌BL21菌株製造、遺伝子組み換え大腸菌K-12菌株製造があります。使用範囲は乳幼児調製粉ミルク、サプリメント、発酵乳製品、コーヒー、お茶などとなり、乳児および後期乳児用調製粉ミルクにての最大使用量は「1.2 g/L(即食状態で計算)」となります。

  • オーストラリア・ニュージーランド

2019年12月、オーストラリア・ニュージーランド食品基準局(FSANZ)は遺伝子組み換え微生物で発酵製造される2'-FLとLNnTが乳児用調製粉ミルクと幼児用調製補充食品への使用を認可しました。2021年11月8日、FSANZは遺伝子組み換え大腸菌(E.co.coli)菌株で発酵製造される2'-FLが乳児用調製粉ミルク、後期乳児用調製粉ミルク、幼児用調製補充食品への使用を認可しました。

  • 中国

2016年8月10日、微生物で製造される2'-FLを登録申請した企業があり、その申請類別は栄養強化剤(受理番号:卫食添新申字(2016)第0040号)となり、申請する使用範囲は乳幼児調製粉ミルクとなります。同年の8月15日、中国国家食品安全リスク評価中心(CFSA)は一部の情報を公開して社会意見を募集しました(CFSA技術審査を通過していなかった)。ただし、その後、この物質に関する他の動きは一切ありません。

2021年後半年、中国NHCは総計3件の2'-FLの新規食品添加物登録申請を受理し、現時点、何れも資料補充中という現状です。

3件の2'-FLの受理情報、審査評価現状は以下の通りです。

NO.

受理情報

(受理時間と受理番号)

審査評価情報

現状

1

2021.07.02

食添新申字(2021)0028

2'-FL(合成法)

2021.07.26:延期通知

2021.10.21:新規食品添加物として社会意見募集

2021.11.22:延期通知

2022.01.18:延期通知

資料補充中

2

2021.10.18

食添新申字(2021)0048

2'-FL

2021.11.22延期通知

2022.01.18:延期通知

資料補充中

3

2021.11.03

食添新申字(2021)0050

2'-FL

2021.11.22延期通知

2022.01.18:延期通知

資料補充中

3. 2'-FLの産業化研究現状

2'-FLは中性のフコシル化HMOsの代表として、ヒト母乳にての相対存在度が一番高いです。2'-FLは腸菌群調節、病原菌付着の抵抗、免疫調節、神経系発育と修復の促進などの数多くの機能活性を有します。現時点、商業化2'-FLの製造は主に化学合成、酵素触媒反応、微生物発酵という三つの製造方法があります。

化学合成方法なら、その必要な由来原料は高くて、しかも、その製造過程は煩雑で、時間も掛かります。酵素触媒反応なら、特定のグリコシルトランスフェラーゼが必要です。酵素触媒反応で製造される2'-FLは安定的、時間があまり掛からなくて、しかも、産物も純化し易いです。ただし、製造に必要なグリコシルトランスフェラーゼのドナーは高くて、グリコシルトランスフェラーゼのタンパク質工程発展でグリコシルトランスフェラーゼの効率を上げることがとても重要で、工業化製造までには少しの時間が必要だと考えております。

目下、微生物発酵製造は2'-FL工業化製造の主要方法です。この方法は、微生物自身(または模擬)の代謝体制に基づいて直接に2'-FLを生物合成します。この過程中、遺伝子組み換え技術を利用して元の宿主細胞が欠けている酵素フラグメントを表現することを通して、欠けている機能を与えます。この製造方法は、コスト低くて、しかも、大量生産も実現できます。

4. 2'-FL中国認可の見込み

上述紹介の通りに、アメリカFAD GRAS認証を取得した2'-FLは、ほとんどは遺伝子組み換え大腸菌や遺伝子組み換えコリネバクテリウム・グルタミクムなどの遺伝子組み換え微生物由来です。また、EUも遺伝子組み換え微生物由来の2'-FLを認可しました。ただし、中国では、2020年以前、中国当局は遺伝子組み換え微生物由来の新規酵素製剤の登録申請だけを受理し、他の遺伝子組み換え微生物に関わる新食品原料または新規食品添加物の登録申請を受理しません。2016年に登録申請したその2'-FLはその後動きがないこともこの原因だかもしれません。

2021年、中国NHCは遺伝子組み換え微生物に関わる新規食品添加物の登録申請ルートをオープンし、遺伝子組み換え微生物に関わる新規食品添加物の登録申請を受理開始しました。遺伝子組み換え微生物に関わる新規食品添加物登録申請の流れおよび資料要求について、詳しくはこちらにてご確認ください。

遺伝子組み換え微生物で発酵製造されるHMOsが中国にての登録申請・審査認可にとって、この政策の施行は絶好的なチャンスです。2021年後半年だけに、2'-FLの新規登録申請を提出した企業は既に3社に達しました。2022年4月15日、中国CFSAはCFSA技術審査を通過した遺伝子組み換え大腸菌に関わる2種の2'-FLを公表し、社会意見募集を開始しました。詳しくはこちらにてご確認ください。また、化学合成方法で製造されるその2'-FLは2021年10月に社会意見を募集しましたが、再び延期しまして、現時点は資料補充中という状態です。

近い将来に、2'-FLは中国において正式認可されるはずだと考えております。その時、中国の乳幼児栄養市場は更に開拓され、乳幼児調製粉ミルクとヒト母乳の差異も更に減少する見込みです。