「化学物質環境リスク評価及び管理制御条例(意見募集稿)」と中国化学物質管理の動向について

2019年1月8日、中国生態環境部は『「化学物質環境リスク評価及び管理制御条例(意見募集稿)」の意見公募の展開に関する通知』を公布した。意見募集稿は計6章、45条からなる。

第一章      総則 

(第一条―第十条)

立法目的、適用範囲、管理原則、政府部門の職責などが規定される

第二章      化学物質環境リスク評価

(第十一条―第十六条)

既存化学物質の環境リスク評価とリスク管理制御に関する要求が明記され

第三章      化学物質環境リスク管理制御 

(第十七条―第二十二条)

第四章 新規化学物質環境管理登記と環境リスク管理制御 (第二十三条―第三十条)

新規化学物質環境管理登記に関する要求が明記される

第五章 法律責任

(第三十一条―第四十一条)

所管部門、評価専門委員会、試験室及び企業の法律責任などが規定される

第六章 附則

(第四十二条―第四十五条)

述語定義、免除条例、国際法との整合性、施行期日などが定められる

「条例(意見募集稿)」は化学物質環境リスク評価及び管理制御システムの構築を目的として、分類管理を実施し、難分解・高蓄積性、環境或は人の健康に悪影響を及ぼす物質やばく露で有害性が高い化学物質に対して、「中国化学物質目録」を既存化学物質及び新規化学物質の分類基準にして、既存化学物質環境リスク評価と管理制御制度、新規化学物質申告とリスク予防制度がそれぞれ設けられている。

一、既存化学物質環境リスク評価と管理制御制度

化学物質環境リスク管理制御措置に科学的な根拠を提供するため、基礎技術作業の環境リスク評価が実施される。環境リスク評価は、特定な化学物質の危険有害性を識別し、ばく露評価を通じて環境や人の健康へのリスクや不確定性を判定し、リスク評価報告を発行するものである。

「条例(意見募集稿)」によりますと、環境リスク評価は化学物質の基本情報、スクリーニング評価、化学物質取扱い情況のモニタリング調査及びリスク評価などの内容を含む。

  1. 優先評価化学物質のスクリーニング評価と環境リスク評価の実施に基本的な情報を提出するため、企業は化学物質の名称、用途及び数量などの内容を含む化学物質の生産、加工使用及び輸入に関する前年度の状況を所管部門に報告しなければならない。
  2. 生態環境部により化学物質の環境リスク評価を行い、リスクの潜在的可能性がある物質に対して優先的な評価を実施し、優先評価化学物質のリスク評価計画を作成、調整および公布する。リスク評価計画に記載される化学物質を生産または輸入する場合、生産・輸入しようとする者は、所管部門に優先評価化学物質の環境ばく露および有害性や危険性に関する情報を提出しなければならない。 
  3. 所管部門は化学物質取扱い情況を定期的に調査し、優先評価化学物質、優先管理制御化学物質およびその他の監督管理が必要な化学物質を重点監督管理し、化学物質環境リスク評価のためのばく露データを提供し、化学物質リスク監督管理措置の調整をサポートする。
  4. 所管部門により優先評価化学物質環境リスク評価の作業を展開し、リスク評価報告を発行する。リスク評価報告には、化学物質のリスク情況を明記すべきであり、優先管理制御化学物質名録の作成およびリスク管理制御措置の実施のため、科学的な根拠を提供する。

名録管理は化学物質リスク管理制御制度の核心である。化学物質環境リスク評価結果に基づいて、所管部門は「優先管理制御化学物質名録」、「厳格に制限される化学物質名録」、「禁止される化学物質名録」を逐一に作成、調整および公布し、相応の管理制御措置を取る。

  1. 環境リスク評価に基づいて環境や人の健康に悪影響を及ぼす恐れがある物質、リスク管理の実施が必要な化学物質の場合、「優先管理制御化学物質名録」に収載される。なお、「優先管理制御化学物質名録」に収載されている化学物質は、排出量や環境への影響に基づき有毒有害汚染物リストに収載され、大気、水、土地、海などの汚染防止法規制により管理・規制されると同時に、清潔生産審査を強制的に実施する制度を実行し、用途や含有量の制限などの管理措置を取る。企業の場合、情報開示プラットフォーム上で前年度の情報を報告し、危険有害性とリスク管理制御措置に関する要求を川下ユーザーに伝えることが求められる。
  2. 関連リスク管理制御措置を実施する後、大部分の用途のリスクを効果的に制御できない優先管理制御化学物質は、「厳格に制限される有毒化学品名録」に収載される。特定用途以外の使用が禁止される。「厳格に制限される有毒化学品名録」に収載された場合は、輸出入許可管理を実施する。該当有毒化学物質を輸入または輸出する前に、企業により有毒化学品輸出入環境管理通関通知書を申請しなければならない。
  3. 関連リスク管理制御措置を実施する後、物質のリスクを効果的に制御できない優先管理制御化学物質は、「禁止される化学物質名録」に収載される。生産、加工および輸出入が禁止される。なお、国際条約により管理制御化学物質、厳格的に制限される化学物質或は禁止される化学物質がほぼ「優先管理制御化学物質名録」、「厳格に制限される化学物質名録」、「禁止される化学物質名録」に収載される。

二、新規化学物質環境管理登記とリスク予防制度

新規化学物質環境管理登記制度は、新規化学物質を生産または輸入する前に評価および審査を通じて、環境や人の健康への悪影響等のリスクを予防するものである。2010年に実施された「新規化学物質環境管理弁法」(環境保護部第7号令)に比べ、「条例(意見募集稿)」は新規化学物質環境管理制度に関する内容の一部を調整する。

  • 新規化学物質環境管理登記は国家の関連規定に基づき費用を徴収する。

  • 生産または輸入する年間1t以上の新規化学物質は届出条件に合致しない場合、所管部門の要求に従い、登記証を取得しなければならない。PBT化学物質が許可されなく、「禁止される化学物質名録」に収載される。

  • 1)生産または輸入が年間1t未満、2)新規モノマーが2%未満のポリマー又は低懸念ポリマー、3)プロセスや製品研究開発を目的として、年間生産量または輸入量が10トン未満且つ有効期限2年以内、新規化学物質届出を行う必要がある。

  • 試験室研究や参照基準を目的としての新規化学物質、且つ年間生産量または輸入量が0.1t未満の場合、新規化学質の登録または届出から免除される。

生態環境部により新規化学物質環境管理登記に関する具体的な規定を制定する。

三、罰則

「条例(意見募集稿)」(第五章)には、政府工作人員、評価専門家、試験機構および企業等に対する法律責任を明確に規定される。違反行為がある場合、行政処分、罰金、期限付きの是正もしくは生産停止・整理、違法行為の公告、不良記録の記載等を処する。犯罪を構成した場合、法に基づき刑事責任を追及する。

試験機構により虚偽の試験報告を作成した場合、10万元以上50万元以下のを罰金を徴収し、且つ5年以内に提出された試験報告を受理しないことができる。違反の疑いがある関係者は1万元以上5万元以下の罰金に処する。情状が重い場合は、10年内に関連活動に従事することを禁止する。

企業は化学物質の生産、加工使用或は輸出入過程において違法行為を行った場合、違法行為の深刻度に応じて、関係所管部門がそれに期限付きの是正を命令し、違法行為を公告し、不良記録を記載し、10万元以上200万元以下の罰金に処する。情状が重い場合は、関係所管部門が関連業務の一時停止、操業停止・整頓を命じる。犯罪を構成した場合、法に基づき刑事責任を追及する。

上述のように、中国における化学物質環境リスク評価および管理制御制度の主な内容を把握できるようになる。既存化学物質と新規化学物質に対して、異なる管理制度を実施しているが、科学的なリスク評価作業の推進を通じて、高リスク化学物質を識別し、危害予防を根本的に強化し、総合予防制御措置を実施し、情報公開と共有メカニズムを確立し、最終的に化学物質環境リスクの制御または低減の目標を実現することである。難分解、高蓄積性を有する物質、環境や人の健康に悪影響をもたらす物質を対象として、重点管理を実施する予定である(PBT、vPvB、CMRなど)。

「条例(意見募集稿)」によると、生態環境部は全国化学物質環境リスク評価業務を展開し、全国化学物質環境リスク監督管理業務を指導、協力および監督する。同時に、国務院発展改革委員会(発改委)、工業情報化部(工信部)、税関総署など多くの所管部門は法に基づき各部門の職責を履行し、化学物質のリスク管理制御業務を共に展開する。各執法部門、試験機構および企業は化学物質環境管理を取扱う際、関連規定に基づき義務を履行し、共同監督管理を通じて違法行為を厳格に打撃し、有効な措置を取ることにより、化学物質環境リスクをしっかりと防止する。

「条例(意見募集稿)」には企業の主体責任を明確し、化学物質の生産、加工使用および輸出入を行うことで損害をもたらした場合、法に従って責任を負う。企業は化学物質を生産・加工使用・輸出入する主な実施単位であり、法に従って所管部門に報告する必要があり、化学物質環境リスク評価業務の展開やリスク防止の実施において重要な役割を果たす。

「条例(意見募集稿)」によると、管理「名録」によって求められる報告情報およびリスク管理制御措置も異なる。

化学物質環境リスク評価及び管理制限条例

注:「条例(意見募集稿)」によると、PBT物質は「禁止される化学物質名録」に収載することを決定する。

(1)「中国化学物質名録」に収載されている化学物質を取扱う企業は、所管部門に前年度の生産、加工使用および輸入する情報(物質名称、用途や数量などを含む)などを報告しなければならない。

(2)「優先評価化学物質リスク評価計画」に記載されている化学物質を取扱う企業は、所管部門に優先評価化学物質の物理化学特性、健康毒理学、生態毒理学、環境への排出、周辺状況などに関する情報を報告しなければならない。

(3)「優先管理制御化学物質名録」に収載されている化学物質を取扱う企業は、優先管理制御化学物質環境情報プラットフォームの上で優先管理制御化学物質の前年度の基本情報を公開し、川下ユーザーにリスク管理制御措置の要求を伝達しなければならない。なお、所管部門による提出された有毒有害汚染物の管理制御、固体廃棄物処理、清潔生産審査、制限用途、含有量制限などの制御措置に関する要求に適合しなければならない。

(4)「厳格に制限される化学物質名録」に収載されている化学物質を取扱う企業は、輸入または輸出する前に輸出(入)環境管理通関通知書を取得しなければならない。

(5)「禁止される化学物質名録」に収載されている化学物質の生産、加工使用および輸出入が禁止される。

(6)新規化学物質、即ち「中国化学物質名録」に収載されない化学物質を取扱う企業は、生産または輸入する前に、関連規定に基づき新規化学物質登録または届出を行わなければならない。

現在、「化学物質環境リスク評価及び管理制限条例(意見募集稿)」に対する意見の募集について終了した。今後、専門家による更なる論議を通じ、中国で全面的な化学物質環境リスク評価および管理制御法規制の強化を推進することが予想されている。企業は化学物質を生産・加工使用・輸出入をする際、主体責任を履行し、有効なリスク防止措置を取ることが重要だと考える。



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