中国生態環境部は、2020年4月29日に、改正した「新化学物質環境管理登記弁法」(生態環境部令第12号)を公式サイトで公布しました。同弁法は2021年1月1日から施行します。2010年1月19日に、旧国家環境保護部から公布された「新化学物質環境管理弁法」(環境保護部令第7号)は、これと同時に廃止します。
「弁法」(第12号令)における改正の主要ポイントは以下の通りです。
1. 適用範囲と適用除外の変更
• 適用範囲
- 中国域内で新規化学物質の研究、生産、輸入及び加工・使用に従事する活動に対して適用します。(地域と活動範囲)
- 税関特殊監督管理地域内で貯蔵され、且つ未加工のまま輸出された新規化学物質には適用しません。(地域と活動範囲)
- 医薬品、農薬、獣医用医薬品、化粧品、食品、食品添加物、飼料、飼料添加物、肥料等の製品については、新規化学物質の工業用途に変更が生じる場合、本弁法により管理します。(物質範囲)
• 適用除外
- 医薬品、農薬、獣医用医薬品、化粧品、食品、食品添加物、飼料、飼料添加物、肥料等
- 放射性物質
2. 代理人の資格と義務
- 代理人:中国域内で法に基づき登記され、独立して法律責任を負うことができる企業・事業単位。
- 委託された代理人は、域外の申請者と共同で新化学物質環境管理登記及び事後の環境管理義務と責任を負います。
- 新規化学物質の登録(登記)内容を公告する場合、代理人、活動の類型、新用途環境管理の要求などに関する内容を新しく追加します。
3. 申告の種類及び申告対象の範囲
環境保護部令第7号 | 生態環境部令第12号 | ||
申告の種類 | 登録(登記)の範囲 | 申告の種類 | 登録(登記)の範囲 |
科学研究届出 | 科学研究を目的とし、年間の生産量又は輸入量が0.1トン未満 | 届出(備案) | 1. 年間の生産量又は輸入量が1トン未満 2. 新規化学物質モノマー含有量が 2%未満のポリマー又は低懸念ポリマー |
簡易申告の特殊な状況 | 1. 中間体として使用し、年間の生産量又は輸入量が1トン未満 2. 輸出のみに使用し、年間の生産量又は輸入量が1トン未満 3. 科学研究を目的とし、年間の生産量又は輸入量が0.1トン以上 1トン未満 4. 新規化学物質モノマー含有量が 2%未満のポリマー又は低懸念ポリマー 5. 生産プロセス及び製品の研究開発を目的とし、年間の生産量又は輸入量が10トン未満で、かつ2年を超えない場合 | ||
簡易申告の基本状況 | 年間の生産量又は輸入量が1トン未満 | ||
通常申告1級 | 年間の生産量又は輸入量が 1 トン以上10トン未満 | 簡易登録(登記) | 年間の生産量又は輸入量が1トン以上 10トン未満 |
通常申告2級 | 年間の生産量又は輸入量が 10 トン以上 100 トン未満 | 通常登録(登記) | 年間の生産量又は輸入量が 10 トン以上 |
通常申告3級 | 年間の生産量又は輸入量が 100 トン以上 1,000 トン未満 | ||
通常申告4級 | 年間の生産量又は輸入量が 1,000 トン以上 |
(一)申告から届出(備案)に変更 現行の科学研究届出申告と簡易申告から届出(備案)に変更します。登録(登記)の範囲に対し調整を行います。企業は完全な届出(備案)資料を提出することにより、活動を展開することができます。受理結果を待つ必要がなく、試験を行う必要もありません。同時に、現行の簡易申告登記証及び登記証コードを取消し、その代替として届出(備案)受理書及び受理コードを使用することとなります。
(二)通常申告の低等級に対する調整(現行の通常申告1級) 新規化学物質の年間生産量又は輸入量が 1トン以上 10トン未満の場合、現行の通常申告から簡易登録(登記)に変更します。申告データに対し要求を減少し、物理化学的性質、難分解性、生物蓄積性及び水生環境急性毒性などの生態毒性学的特性の試験報告書又は資料が求められ、リスク評価報告書が提出不要となります。登録(登記)流れを簡素化し、専門家評議審査を取り消します。
(三)通常申告の中・高等級に対する調整(現行の通常申告2、3、4級) 新規化学物質の年間生産量又は輸入量が 10 トン以上の場合、現行の通常申告から通常登録(登記)に変更します。単純に数量等級ごとにデータ要求を規定することではなく、環境リスク評価及び監督管理要求に基づき、危険有害性とばく露状況を考慮し、データ要求を提出します。
※ 注:科学研究届出は、「新化学物質環境管理弁法(改正意見募集稿)」で取り消されましたが、「弁法」(第12号令)によると、届出(備案)を行う必要があります。
4. 高危害化学物質の申告(申請)活動の必要性
高危害化学物質とは、難分解性、生物蓄積性並びに毒性を有する物質(PBT)、極めて難分解性で高い生物蓄積性(vPvB)を有する物質および同程度の悪影響を及ぼす可能性のある物質を指します。
高危害化学物質の通常登録(登記)を行う場合、社会・経済効益に対する分析資料の提出が求められます。中に、新規化学物質は、性能、環境友好性などの方面で使用している同じ用途の物質よりも優位性がある証明書が含まれます。
5. 「中国現有化学物質名録」への収載
通常登録(登記)を行った新規化学物質は、登録(登記)日から満5年が経過したら、生態環境部主管部門が「中国現有化学物質名録」への収載を公告します。回顧的評価が取り消されます。
「弁法」(第12号令)実施後、現行の環境保護部令第7号に基づき通常申告登記証を取得した、まだ「中国現有化学物質名録」に収載されない新規化学物質について、初回の生産又は輸入活動を行った日から満5年が経過したら、または本弁法の施行日から満5年の時点で、「中国現有化学物質名録」に収載します。また、旧国家環境保護総局第17号令に基づき、正常な申告環境管理登記を取得した新規化学物質について、本弁法の施行日から6ヶ月以内に「中国現有化学物質名録」に収載します。
6. 新用途環境管理登記の実施
「中国現有化学物質名録」に収載されたPB、PT又はBTの特性を有する新規化学物質に対し、新用途環境管理を実施します。許可用途以外の他の工業用途に使用するには、新用途環境管理登記を行わなければなりません。
「中国現有化学物質名録」に収載された高危害新規化学物質について、新規申告(申請)者による如何なる工業用途として使用するには、生産、輸入又は加工・使用する前に、新用途環境管理登記を行わなければなりません。
7. 再登録(登記)
通常登録(登記)の登記証を取得した新規化学物質は、「中国現有化学物質名録」に収載される前に、次に掲げるいずれかに該当する場合、登記証所持人は改めて登録(登記)を行わなければなりません。
- 実際に生産又は輸入数量が申請登記数量を超過する場合
- 輸入から生産に変更する場合
- 申請用途を変更しようとする場合
- 環境リスク管理措置を変更しようとする場合
- 環境リスクを増大させる場合
上記以外に登記証に記載されている情報に変化が発生した場合、登記証の変更を行います。
簡易登録(登記)の登記証を取得した新規化学物質については、登記証に記載されている情報に変化が発生した場合、登記証の変更を行います。
8. 活動報告
登記証所持人は、初回の生産活動から60日以内、又は初回に輸入し加工・使用者に移送してから60日以内に、生態環境部主管部門に新規化学物質の初回活動状況を報告しなければなりません。
通常登録(登記)の登記証に環境管理要求に基づき年度報告書の提出が記載された場合、登記証所持人は登録(登記)日の次年度から、毎年4月30日までに、生態環境部主管部門に対し、登録(登記)された新規化学物質に関する前年度の生産又は輸入の状況、環境への排出状況、リスク管理措置及び環境管理要求の実施状況を報告しなければなりません。
注:現行の環境保護部令第7号に基づき、初回活動の発生後30日以内に報告しなければなりません。また、簡易申告の登記証所持人は、毎年 2 月1 日までに、登録センターに対し、登録された新規化学物質に関する前年度の生産又は輸入の状況を報告しなければなりません。
9. 情報保護
申告(申請)者は提出した登録(登記)又は届出(備案)書類において商業秘密又は技術ノウハウの秘密保持を求める場合、その必要性に関する説明資料を提出しなければなりません。物質名などの識別情報の保護期限は登録(登記)日又は届出(備案)日から5年を超過してはいけません。環境、健康の公共利益に重大な影響を及ぼす恐れがある場合、法に基づき秘密保持を許可しません。
「弁法」第12号令が発効する前に、すでに「中国現有化学物質名録」に収載され、且つ物質名などの識別情報の保護を実施している場合、その識別情報の保護期間は最大2025年12月31日まで延長します。
10. 企業の法律責任
• 罰金
本弁法を違反して、詐欺、賄賂等の不正手段を通じて新化学物質環境管理登記を取得した場合、規定に基づき新化学物質登記/届出を行わなかった場合、要求通りに報告しなかった場合、登記証の規定を違反して新規化学物質の関連活動を展開した場合、最高で3万元の罰金を科します。
• 共同懲戒
- 申告(申請)者が詐欺、賄賂等の不正手段を通じて新化学物質環境管理登記を取得した場合、3年以内に再度、新化学物質環境管理登記の申請を受理しません。
- その他の違法行為があった、情状が重い場合は、1年以内に再度、新化学物質環境管理登記の申請を受理しません。
本弁法の改正に従い、「新化学物質環境管理登記指南」(ガイダンス文書)及び附属文書の改正作業も進んでいると考えられます。申告データの要求、危害評価、環境リスク評価、社会・経済効益の分析、新用途環境管理登記などに関する内容をさらに細分化・完善化します。