2020年6月9日、台湾行政院環境保護署毒物及び化学物質局は「既存化学物質標準登録資料作成ガイダンス第1版」(以下「ガイダンス」という)を公布しました。「ガイダンス」は、2019年に発表された「段階的に登録が指定される既存化学物質標準登録ガイドライン(草案)」と比べ、既存化学物質標準登録の資料準備や作成について詳しく紹介し、企業の法規対応を支援します。
「ガイダンス」は、全6章及び附則からなります。
第一章 登録法規 | 既存化学物質標準登録に関する法規の規定と専門用語の定義を説明 |
第二章 確認流れ | 登録義務の有無の確認、適用範囲、登録期限、登録量級、登録項目などを解説 |
第三章 適用除外原則 | 物理化学特性、毒性、生態毒性などについての適用除外項目を解説(ECHAの情報要件及び化学物質安全性評価のガイダンスを参照) |
第四章 登録資料項目 | 登録資料に関する要求事項を解説 |
第五章 資料準備の参考原則 | 物理化学データ、毒性データ、生態毒性データなどの準備と報告書作成に関する手引き |
第六章 登録審査、管理及び情報公開 | 関連法規内容を説明し、企業の権利及び義務を明確にする |
附則 | 委任状記入例、危害分類、PBT及びvPvBの判定基準、ナノ物質、QSAR報告書及び体系的文献レビューの作成の手引き |
一、情報要件の修正
必要な情報 | 草案 | ガイダンス |
遺伝毒性 | 1級 細菌を用いる復帰突然変異試験の実施 | 1級 細菌を用いる復帰突然変異試験の実施 試験で陽性の場合、哺乳類細胞のin vitro遺伝毒性試験を追加実施 in vitro試験でも陽性結果を示した場合、追加のin vivo試験が必要 |
2級 哺乳類細胞のin vitro遺伝毒性試験或はin vivo遺伝毒性試験の実施 | 2級 細菌を用いる復帰突然変異試験及び哺乳類細胞のin vitro遺伝毒性試験の結果を同時に提出 いかなる結果が陽性の場合、追加のin vivo試験が必要 | |
3級、4級 in vivo 遺伝毒性試験の実施 | 3級、4級 細菌を用いる復帰突然変異試験、哺乳類細胞のin vitro遺伝毒性試験及びin vivo遺伝毒性試験の実施結果を同時に提出 | |
反復投与毒性試験 | 3級、4級 90日間反復投与毒性試験の実施 | 3級、4級 28 日間反復投与毒性試験と90 日間反復投与毒性試験の結果を提出 |
生殖発生毒性試験 | 4級 二世代繁殖毒性試験の実施 | 4級 胎児期と二世代繁殖毒性試験の結果を提出 |
「ガイダンス」の作成は、ECHAの情報要件及び化学物質安全性評価のガイダンス(Guidance on Information Requirements and Chemical Safety Assessment)を参照し、登録に必要な情報を整理し、毒性エンドポイントの必要情報を加えました。企業は、既存化学物質標準登録を行う場合には、「ガイダンス」の規定を参考とし、登録資料の準備と提出を行うことができます。
二、国際公的データベースの参照
推奨国際公的データベースを活用することで、物理化学、毒性及び生態毒性試験のエンドポイントに関する情報要件を取得することが推奨されます。「ガイダンス」には、Read Acrossの適用範囲を明確にして、物理化学的特性、毒性、生態毒性の予測に利用可能です。これを通じて、企業の情報収集の困難性を軽減させることができます。
• International Labour Organization International Chemical Safety Cards (ILO ICSC) database
• International Programme on Chemical Safety (IPCS)
• International Agency for Research on Cancer (IARC)
▪ IARC Monograph
• World Health Organization (WHO)
• OECD Screening Information Dataset (OECD SIDS)
• European Commission (EC) Joint Research Centre
• European Union Risk Assessment Report (EU RAR)
• U.S. Environmental Protection Agency (US EPA)
▪ CompTox Chemicals Dashboard
▪ Integrated Risk Information System (IRIS)
▪ ChemView
▪ ECOTOX Knowledgebase
• Agency for Toxic Substances and Disease Registry (ATSDR)
• National Toxicology Program (NTP)
• ChemIDplus
• Chemical Carcinogenesis Research Information System (CCRIS)
• GENE-TOX Data
• NITE Chemical Risk Information Platform (NITE-CHRIP)
▪ Japan NITE Hazard Assessment Report
▪ Japan Chemical Collaborative Knowledge Database (JCHECK)
• NICNAS-Priority Existing Chemical (PEC) assessment
• National Industrial Chemicals Notification and Assessment Scheme
三、登録コードの発給
「ガイダンス」第4章によると、登録者は1~7項に規定されている資料を提出した後、中央主管機関は、認可した案に対して、既存化学物質標準登録のコードを発給します。必要時企業に危害性評価情報或はばく露評価情報に関する追加資料を要求する可能性がありますが、審査期限までに提出しなくてもよいです。これを通じて、できる限り早期に既存化学物質標準登録を行うことを奨励し、化学物質の製造・輸入量、用途とばく露情報、危害性情報などを収集し、今後の危害評価及びばく露評価を行うことに役に立ちます。
四、「化学物質危害評価及びばく露評価ガイダンス」 公布予定
既存化学物質標準登録作業の重要な参考として、「化学物質危害評価及びばく露評価ガイダンス」はまだ作成中ですが、危害評価及びばく露評価の要求や実施方法を明確化する予定です。
五、試験機関の増加
既存化学物質標準登録の試験報告書を提出する試験機関の認可範囲を拡大します。毒性及び生態毒性試験の実施について、国際基準ISO/IEC17025に適合している試験機関から提出される報告書を受け取ります。また、台湾の大学・ 専門学校の試験室は、物理化学性、毒性及び生態毒性試験の実施機関として認められます。
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