2023年3月24日、中国台湾環境保護局(EPA)は、「新規化学物質および既存化学物質の第一段階登録資料作成ガイダンス」(第一版)(以下、「ガイダンス」)を発行しました。
「ガイダンス」は、登録者が化学物質の登録をよりよく完了させるために、主に「新規化学物質および既存化学物質登録弁法」の関連規定を説明・解釈します。2015年8月、EPAは「新規化学物質および既存化学物質のデータ登録ツールに関する説明」(以下、「説明」)を実施しました。その後、8年が経過し、実際の実施過程で多くの問題があり、同時に一部の試験規範が更新されたため、企業が実際にあった問題や業界の提案を考えて、「説明」を改訂しました。
「ガイダンス」の内容は、5章に分かれており、その詳細は下表のとおり:
『新規化学物質および既存化学物質の第一段階登録資料作成ガイダンス(第一版)』 | |
第一章 | 登録概要:企業が登録作業のポイントを理解させるために、法規制の根拠、登録ツールの使い方、重要なプロセス及び登録の基本的な概念についての解説。 |
第二章 | 登録範囲:登録者が登録物質の種類を判定できるために、登録作業の適用地域と期間、既存化学物質のリスト(公告リスト)、登録者の資格と登録物質範囲の明確化。 |
第三章 | 登録類型及び情報:登録種類とそれに必要な情報項目の判定、異なる登録状況に適用されること。 |
第四章 | 登録プロセスおよび情報システム:指定された情報登録ツール、プラットフォーム、シートおよびその他の関連する登録標準フォーマットを正しく使用するために、企業を支援する登録ツールに関する指示の提供。 |
第五章 | 資料審査、管理及び情報公開:化学物質の登録審査のプロセスや管理、登録後の物質に関する情報公開の原則の説明。 |
付録 | 新規化学物質の判定及び命名の原則、低懸念物質であるポリマーポリエステル反応物のリスト、危険有害物質の分類表、PBTおよびvPvB物質の判定基準、ナノ物質、委任(授権)状の記入例などの紹介。 |
今回の改訂の注目すべき変更点:
1)既存化学物質の第一段階登録要件の調整
- 2016年4月1日以降、初めて既存化学物質の製造または輸入を行う場合、年間総量が100kg以上であれば、その事実が発生した日から6ヶ月以内に承認登録コードを取得し、100kgに達していなければ先に登録申請する必要がある。
企業は、今後、既存化学物質を大容量で製造・輸入する場合は、標準登録の遅延を避けるために、事前に第一段階の登録を行う必要があることにご注意してください。
2) 授権書と有効期間の調整
- 授権書は、依頼先の担当者の署名と社印のみが必要で、長期間の有効性がある。
企業は代理人と頻繁に授権書を署名する必要がなくなり、代理人の業務負担を軽減することができます。
3)化学物質定義の追加
- 化学物質の構造安定性を維持するために、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤などが添加される化学物質を独自に製造または輸入する場合は、関連法規に従って登録作業を行う必要がある。
今回の改訂により、化学物質の登録種類が増えましたので、これらの化学物質を独自に製造または輸入する場合は、必要に応じて対応する登録作業を行わなければなりません。
(4) 混合物登録に関する追加要件
- 混合物全体としての登録は必要ないが、混合物中に含まれる化学物質については登録すべきである。また、水和物や合金も混合物に該当し、個々に識別可能な情報や独自性があれば、水和物や合金の個別登録が可能になる。
これにより、混合物登録の種類がさらに明確になり、企業が混合物を判定し、それに応じた登録を行うことが容易になります。
(5) 低懸念ポリマーの判定条件第4条の調整
- 低懸念ポリマーの判定条件の第4条:指定溶剤がテトラヒドロフランとジメチルメチルチアミンの2種類。
すなわち、低懸念ポリマーの判定条件を緩和し、登録が容易になります。
(6) 適用除外の範囲の拡大
- 遺伝子制御により生成されるタンパク質等の高分子を天然物質として、家庭用包装混合物に含まれる製品については成形品と見なされる。
すなわち、上述の物質は登録必要がありません。
(7) 毒性情報および生態毒性情報試験報告書の要求事項の調整
新規化学物質では国際的な学術雑誌の文献を認めないため、国際的にレビューされた学術文献への毒性情報および生態毒性情報の試験報告書の掲載は削除されました。
(8) 毒性情報の試験要件と試験データの提出の見直し
- in vitro 皮膚刺激性試験の結果が陽性の場合は、in vitro 皮膚腐食性試験で確認すべき、in vitro 皮膚腐食性試験の結果が陽性の場合は、in vitro 皮膚刺激性試験で確認すべきである。in vitro 試験の結果または構造活性相関推定データにより危険有害性の区分が可能な場合、in vitro 皮膚刺激性/腐食性試験を免除することができる。in vitro 眼刺激性試験、構造活性相関推定または相互参照の結果、危険有害性の区分が可能な場合、in vitro 眼刺激性試験の免除、in vitro皮膚感作性試験の増加、90 日の承認登録クラス 2物質の反復投与毒性試験、承認登録クラス 3またはクラス 4物質の慢性反復投与毒性試験の追加を行う。
また、遺伝毒性および基本的なトキシコキネティクスも改訂されました。企業は、物質の登録を完了させるために、上記の試験要件に従って対応する試験を行わなければなりません。
(9) 一部の毒性情報および生態毒性情報についての試験規範の追加
情報項目 | 試験/評価のエンドポイント | 推奨試験規範 |
眼刺激性 | In vitro試験 | OECD TG 460 OECD TG 491 OECD TG 492 OECD TG 494 OECD TG 496 OECD TG 467 |
皮膚感作性 | In vitro試験 | OECD TG 497 OECD TG 442C OECD TG 442D OECD TG 442E |
遺伝毒性 | In vitro 哺乳類細胞遺伝毒性試験 | OECD TG 490 |
体内遺伝 | OECD TG 489 | |
陸上植物への毒性 | 最小影響(観察)濃度(LOEC) | OECD TG 227 |
無影響(観察)濃度(NOEC) | ||
生物蓄積性:水生生物/基質 | 生物蓄積パータン | OECD TG 305-I OECD TG 305-II OECD TG 305-III |
眼刺激性、皮膚感作性、遺伝毒性、陸上植物への毒性、生物蓄積性:水生生物/基質、上記試験ノードの試験規格を追加し、特に皮膚感作性のin vitro試験が新規項目となります。
10)物理的・化学的特性、毒性試験に関する適用除外の追加
試験項目 | 追加される適用除外規則 |
分配係数:n-オクタノール/水 | 分解、表面活性が高い、試験すると激しい反応がある、水やn-オクタノールに溶けないなど、試験ができない場合は、分配係数の推定値と使用した推定方法・ソフトを提供すること。 |
水への溶解性 | 金属または微溶性金属化合物;水中での物質の変質・溶解に関する情報を提供すること;水に溶けない物質の場合、分析法の定量限界試験を実施すること。 |
引火点 | (1) 気体; (2) 可燃性でなく、蒸気圧が1hPa以下の固体。 |
酸化 | その他の可燃性物質と発熱反応しない物質は十分な裏付けが提出必要。 |
粘度 | (1) ガス類; (2) 炭化水素;この場合、40℃の動粘度資料を提出すること。 |
金属腐食性 | 融点が55℃以上の固形物 |
皮膚刺激性 | 室温で水と接触して可燃性の物質(例:禁水性物質)、該当免責事項に該当するが、QSARや相互参照による有害性予測の検討が必要である。 |
眼刺激性 | |
皮膚感作性 | |
遺伝毒性 | 発がん性物質クラス1A、1B、生殖細胞変異原性物質クラス1A、1B、2であることが判明している場合、in vitro哺乳類細胞毒性試験が免除できる。 |
反復投与毒性: 飲み込み、経皮、吸入 | 当該物質の 28 日間反復投与毒性試験の結果が クラス1 に分類される場合、90 日間反復投与毒性試験が免除できる。 |
生殖・発生毒性 | 生殖毒物クラス1Aまたは1Bに分類される物質については、一定の条件を前提に生殖毒性試験または発生毒性試験が免除できる。 |
登録のために高コストの新規化学物質試験については、上記の新たな適用除外規則により、登録者の経済的負担を軽減させます。
(11)追加資料の延長条件の新変化
- 科学的・技術的要因で期限内に訂正を完了できない場合、登録者は訂正完了期限の延長を申請することができ、訂正が完了しない場合、または訂正回数が1回以上、データを訂正できない場合、申請は却下される。
「ガイダンス」では、訂正完了期限の延長を明確に規定することで、企業の円滑な登録完了を支援します。
(12) 責任者変更期間の明確化
- 承認された化学物質の登録コードの有効期間中、責任者の変更は 60 営業日以内に提出する必要がある。
上記の主な変更点に加え、台湾環境保護庁は、ガイダンスの一部の法規制根拠、内容、および付録を修正・統合しました。
なお、ガイダンス改訂の変更点をより理解しやすくするため、CIRS Groupは4月27日に中国語の「新規化学物質および既存化学物質の第一段階登録資料作成ガイダンスの改訂に関する解説」という無料WEBセミナーを開催し、ご興味をもつ方はこちらにてご登録ください。