「化学物質環境リスク評価および管理制御条例(通報稿)」をWTO/TBT通報
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背景

2019年1月8日、中国生態環境部は「化学物質環境リスク評価および管理制御条例(意見募集稿)」を公布し、社会に対して意見を公募しました。主管部門は提出意見を踏まえ、専門家を組織して論証を行い、「条例」(意見募集稿)に対し改定を行いました。

2019年9月2日、「化学物質環境リスク評価および管理制御条例(通報稿)」をWTO/TBT通報し、60日間のコメント募集を実施しています。これによって、中国で化学物質の環境リスク評価および管理制御制度の確立がより明確にされました。

「条例」(意見募集稿)と比較して、「条例」(通報稿)は内容において免除範囲を追加し、既存化学物質のリスク評価制度および管理制御措置、新規化学物質の環境管理制度などに関する内容に対して修正および改善を行いました。

「条例」(通報稿)は計6章、51条からなります。

➣ 第一章 立法目的、適用範囲、管理原則、政府部門の職責などが規定される

➣ 第二章 既存化学物質の環境リスク評価制度を明確にする

➣ 第三章 既存化学物質のリスク管理制御に関する要求が明記される

➣ 第四章 新規化学物質の環境管理登記制度およびリスク管理制御に関する要求が明記される

➣ 第五章 関連人員、機構および企業の法律責任などが規定される

➣ 第六章 述語定義、免除条例、国際法との整合性、施行期日などが定められる

「条例」(通報稿)は化学物質の環境リスク評価および管理制御システムの構築を目的として、分類管理、根源から防止、総合コントロール、公衆が知るという原則を堅持し、固有の環境又は健康への危害が大きくて、難分解・高蓄積性、環境或は人の健康に悪影響を及ぼすおそれのある化学物質を重点管理します。「中国現有化学物質名録」を既存化学物質および新規化学物質の分類基準にして、既存化学物質の環境リスク評価および管理制御制度、新規化学物質の登記准入およびリスク予防制度がそれぞれ設けられます。

「条例」(通報稿)に規定される化学物質の管理制御制度および企業の責任に関する主な要点は、以下のとおりです。

一、既存化学物質の環境リスク評価および管理制御制度

「条例」(通報稿)によると、化学物質の環境リスク評価制度は物質の基本情報の報告、リスク・スクリーニング評価、化学物質取扱い情況のモニタリング調査、危害の識別、暴露評価、環境リスク評価報告の編成などを含みます。

1. 企業は3年ごとに報告を行い、化学物質の名称、用途および数量などの基本情報を含む化学物質の生産、加工使用および輸入に関する過去3年間の状況を主管部門に報告しなければなりません。これに基づき主管部門が報告提出の許容値を設定し、報告を免除する化学物質のリストを作成します。

2. 生態環境部は衛生健康主管部門と共同で、化学物質の環境リスク・スクリーニング評価を行い、優先評価化学物質リスク評価計画を作成します。難分解、高蓄積性を有する物質、環境や人の健康に悪影響をもたらす物質、潜在的暴露およびリスクの懸念が高い物質に対して、環境リスク評価を優先的に実施します。優先評価化学物質リスク評価計画に記載される化学物質を生産または輸入する場合、生産・輸入しようとする企業は、主管部門に優先評価化学物質による暴露および危害性に関する既知の情報を報告しなければなりません。情報不足のためリスク評価ができない場合、主管部門は試験の追加を命じることができます。

3. 主管部門は化学物質取扱い情況を定期的にモニタリング調査を実施し、暴露リスクを識別し、優先評価化学物質、優先環境管理化学物質およびその他の監督管理が必要な化学物質を重点監督管理し、化学物質環境のリスク評価の展開、化学物質のリスク管理制御措置の調整をサポートします。

4. 主管部門により優先評価化学物質の環境リスク評価の作業を展開し、リスク評価報告を発行します。リスク評価を展開する場合、化学物質の生産、加工、使用、廃棄処理などの全ての生命サイクルを考慮し、化学物質に関する既知の用途を注意すべきです。専門家委員会の審査に通過したリスク報告は、優先環境管理化学物質名録に収載され、環境リスク管理制御措置を取る科学的な根拠とされます。

名録管理は既存化学物質のリスク管理制御制度の核心です。リスク評価の結果に基づいて、環境や人の健康に悪影響を及ぼす恐れがある物質、リスク管理の実施が必要な化学物質について、「優先環境管理化学物質名録」に収載されます。生産・加工使用・輸入しようとする企業は、情報開示プラットフォーム上で前年度の状況報告を提出し、危害性およびリスク管理制御措置に関する要求を川下ユーザーに伝えなければなりません。なお、「優先環境管理化学物質名録」に収載される化学物質に対して、排出の制限や根源から使用の禁止などの措置を取ります。

1. 「優先環境管理化学物質名録」に収載される化学物質について、排出先に基づき有毒有害汚染物名録に収載され、大気、水、土地、海などの汚染防止法規制により管理・規制されると同時に、清潔生産審査を強制的に実施する制度を実行します。

2. 優先環境管理化学物質について、許可用途以外の他の工業用途に使用するには、新用途登録(登記)を行わなければなりません。

3. 主管部門は優先環境管理化学物質の環境リスクに基づき、「禁止・制限される化学物質名録」を制定、調整および公布し、使用の禁止または制限に関する措置を取ります。「禁止・制限される化学物質名録」に収載される物質について、次のいずれかまたは複数の管理措置を取ります。

  • 含有量の制限
  • 特定用途に使用禁止
  • 特定の用途以外に使用禁止
  • 生産、加工使用または輸出入の禁止

4. 厳格に制限され、特定の用途以外に使用禁止される化学物質について、「厳格に制限される化学品名録」に収載され、輸出入環境許可管理を実施します。

なお、国際条約により管理制御される化学物質、厳格的に制限される化学物質或は輸出入が禁止される化学物質がほぼ「優先環境管理化学物質名録」、「厳格に制限される化学物質名録」、「禁止・制限される化学物質名録」に収載され、確実に国際条約の要求を履行します。

二、新規化学物質の登記准入およびリスク予防制度

新規化学物質は、「中国現有化学物質名録」に収載されていない化学物質です。新規化学物質の環境管理登記には、簡易登録(登記)、通常登録(登記)および届出(備案)の3種類があります。新規化学物質を生産または輸入する前に、主管部門に登録(登記)または届出を行わなければなりません。なお、新規化学物質の環境管理登記を行う場合、国家の関連規定に基づき費用を徴収します。

  • 1)生産または輸入が年間1トン未満、2)新規モノマーが2%未満のポリマー又は低懸念ポリマー、生産または輸入する前に届出(備案)を行わなければなりません。届出(備案)材料および既知の危害性に関する情報を提出し、届出(備案)受理書を取得します。
  • 生産または輸入が年間1トン以上10トン未満の場合、生産または輸入する前に簡易登録(登記)を行わなければなりません。物理化学的性質データ、難分解性・蓄積性データおよび生態毒理学試験報告などの新規化学物質の危害性に関する登録(登記)材料を提出し、登記証を取得します。
  • 生産または輸入が年間10トン以上の場合、生産または輸入する前に通常登録(登記)を行わなければなりません。物理化学的性質データ、健康毒理学データおよび生態毒理学試験報告などの新規化学物質の危害性に関する登録(登記)材料およびリスク評価報告を提出し、登記証を取得します。
  • 科学研究を目的とし、年間の生産量又は輸入量が0.1トン未満の場合、登録(登記)または届出(備案)の手続きが免除されます。

改正「新化学物質環境管理弁法」は2019年8月16日まで意見公募を行いました。今回、「条例」(通報稿)と共にWTO/TBT通報を行い、コメント募集を実施中です。

三、罰則

「条例」(通報稿)(第五章)には、政府工作人員、評価専門家、試験機構および企業単位等に対する法律責任を明確に規定されます。違反行為がある場合、行政処分、罰金、期限付きの是正もしくは生産停止・整理、違法行為の公告、不良記録の記載などに処します。犯罪を構成した場合、法に基づき刑事責任を追及します。

試験機構により虚偽の試験報告を作成した場合、10万元以上50万元以下のを罰金を徴収し、且つ5年以内に提出された試験報告を受理しないことができます。違反の疑いがある関係責任者は1万元以上5万元以下の罰金に処します。情状が重い場合は、10年内に関連活動に従事することを禁止します。

企業は化学物質の生産、加工使用或は輸出入過程において違法行為を行った場合、違法行為の深刻度に応じて、関係主管部門がそれに期限付きの是正を命令し、違法行為を公告し、不良記録を記載し、10万元以上200万元以下の罰金に処します。情状が重い場合は、関係主管部門が関連業務の一時停止、操業停止・整頓を命じます。犯罪を構成した場合、法に基づき刑事責任を追及します。

上述のように、中国における化学物質の環境リスク評価および管理制御制度の主な内容を把握できるようになります。既存化学物質と新規化学物質に対して、異なる管理制度を実施していますが、科学的なリスク評価作業の推進を通じて、高リスク化学物質を識別し、危害予防を根本的に強化し、総合予防制御措置を実施し、情報公開と共有メカニズムを確立し、最終的に化学物質環境リスクの制御または低減の目標を実現します。難分解性、高蓄積性を有する物質、環境や人の健康に悪影響をもたらす物質を対象として、重点管理を実施する予定です(PBT、vPvB、CMR)。

「条例」(通報稿)によると、生態環境部は全国の化学物質の環境リスク評価業務を展開し、環境リスク監督管理業務を指導、協力および監督します。同時に、国務院発展改革委員会(発改委)、工業情報化部(工信部)、税関総署など多くの主管部門は法に基づき各部門の職責を履行し、化学物質のリスク管理制御業務を共に展開します。各執法部門、試験機構および企業は化学物質の環境管理を取扱う際、関連規定に基づき義務を履行し、共同監督管理を通じて違法行為を厳格に打撃し、有効な措置を取ることにより、化学物質の環境リスクをしっかりと防止します。

「条例」(通報稿)には企業の主体責任を明確し、化学物質の生産、加工使用および輸出入を行うことで損害をもたらした場合、法に従って責任を負わなければなりません。企業は化学物質を生産・加工使用・輸出入する主な実施単位であり、法に従って主管部門に報告する必要があり、化学物質の環境リスク評価業務の展開やリスク防止の実施において重要な役割を果たすべきです。

「条例」(通報稿)によると、管理制御「名録」の制定は中国で化学物質の環境リスク管理制御措置を取るための基礎になります。生産、加工使用および輸出入する化学物質は異なる管理制御「名録」に収載され、これに基づき求められる報告情報およびリスク管理制御措置も異なります。


(1)「中国現有化学物質名録」に収載される化学物質を取扱う企業は、3年ごとに主管部門に報告し、過去3年間の生産、加工使用および輸入する物質に関する基本情報(物質名称、用途や数量などを含む)を報告しなければなりません。

(2)「優先評価化学物質リスク評価計画」に記載される化学物質を取扱う企業は、主管部門に優先評価化学物質の基本情報、環境への排出、企業の周辺状況、既知の物理化学的性質データ、健康毒理学データおよび生態毒理学データなどを報告しなければなりません。主管部門の要求に基づき、危害性に関するそのほかの試験が追加される可能性があります。

(3)「優先環境管理化学物質名録」に収載される化学物質を取扱う企業は、環境情報プラットフォームの上で、化学物質の基本情報、環境への排出、廃棄物の処理などの前年度の情報を公開し、川下ユーザーにリスク管理制御措置の要求を伝達しなければなりません。なお、主管部門による提出された有毒有害汚染物の管理制御、固体廃棄物処理、清潔生産審査などの制御措置に関する要求に適合しなければなりません。

(4)「優先環境管理化学物質名録」に収載される化学物質について、許可用途以外の他の工業用途に使用するには、主管部門に申請を提出し、新用途登録(登記)を行わなければなりません。

(5)「禁止・制限される化学物質名録」に収載される化学物質を取扱う企業は、主管部門の要求に基づき、禁止または制限する措置を厳格に執行し、含有量の制限、特定用途に使用禁止、特定の用途以外に使用禁止、生産、加工使用または輸出入の禁止などに関する事項を注記しなければなりません。なお、制限される化学物質について、企業は活動状況を記録する制度を構築し、加工使用の状況を真実に記録すべきです。関連資料を10年以上保存することが要求されます。

(6)「厳格に制限される化学物質名録」に収載される化学物質を取扱う企業は、輸入または輸出する前に輸出(入)環境管理通関通知書を取得しなければなりません。

(7)新規化学物質、即ち「中国現有化学物質名録」に収載されない化学物質を取扱う企業は、生産または輸入する前に、関連規定に基づき新規化学物質登録(登記)または届出(備案)を行わなければなりません。

CIRSは、HCF(Helsinki Chemicals Forum)と「Asian Helsinki Chemicals Forum and the 4th Summit Meeting on Chemical Regulations in Asia Pacific」を2019年10月24日(木)~25日(金)に上海で共同開催することを決定しました。Helsinki Chemicals Forum (HCF)は、化学物質の安全性と管理の向上を目指している独立な化学物質フォーラムとして運営しています。この度、HCFが初めてアジアで開催され、アジア太平洋地域に適合する討論内容とテーマを選定し、基調講演やパネルディスカッションを行います。

生態環境部固体廃棄物及び化学品管理技術中心の専門家をお迎えし、中国における化学物質環境管理の現状及び挑戦について詳しく紹介いたします。ご興味ある方はぜひご参加の程よろしくお願い致します。


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