中国生態環境部は、2020年4月29日に、改正した「新化学物質環境管理登記弁法」(生態環境部令第12号)を公式サイトで公布しました。同弁法は2021年1月1日から施行します。
「新化学物質環境管理登記弁法」(以下「弁法」という)に付属する規範性文書として、2020年8月17日に公布された「新化学物質環境管理登記指南(意見募集稿)」(以下「指南」という)は、「弁法」対応のための具体的な事項を説明し、実施要求を明確化します。
一、登記の範囲
1. 「中国現有化学物質名録」に収載され、且つ新用途環境管理が実施される化学物質について、許可用途以外の他の工業用途に使用する場合には、新化学物質環境管理登記を行わなければなりません。(追加・明確化)
2. 医薬品(原薬を含み)、農薬(原薬を含み)は「弁法」に適用されません。ただし、他の工業用途に使用され、且つ新化学物質である場合、新化学物質環境管理登記を行わなければなりません。(追加・明確化)
3. 特定の機能を持つ製品或は調剤は、特定の機能を発揮するための化学反応により生成した化学物質について、新化学物質環境管理登記が免除されます。例、接着剤、キレート剤、凝集剤、表面処理剤など。(追加・明確化)
二、登記類型及び特殊な形式
登記類型 | 通常登記 | 簡易登記 | 届出 |
登記条件 | 年間の生産量又は輸入量が10トン以上 | 年間の生産量又は輸入量が1トン以上10トン未満 | 1. 年間の生産量又は輸入量が1トン未満 2. 新規化学物質モノマー又は反応体の含有量が2%未満のポリマー又は低懸念ポリマー、且つポリマー届出の排除状況に該当しない |
通常登記、簡易登記および届出の3種類があり、各種類により申請条件が異なります。簡易登記を行った新規化学物質は、通常登記の要求事項に従い新化学物質環境管理登記を行うことが可能であり、登記証の再発行を申請します。
通常登記及び簡易登記の特殊な形式として、系列登記、連合登記を行うことができます。系列登記を行う新規化学物質の数量は6つを超えてはいけません。また、各物質ごとに物理化学特性データ、用途及び申請登記の数量を提出すべきです。毒性データ及び生態毒性データの場合、複数の新規化学物質の試験データを1つの総体として提出可能が、同じデータを少なくとも1つ提出すべきです。複数の域外申請者がある場合、同一代理人を指定して連合登記を行うべきです。
三、技術審査と抽出検査
1. 固体廃棄物及び化学品管理技術中心は、通常登記の申請材料に対して、専門家委員会を組織し、技術審査を実施し、意見を提出します。
2. 固体廃棄物及び化学品管理技術中心は、簡易登記の申請材料に対して技術審査を実施し、意見を提出します。
3. 以下状況のいずれか一つに該当する場合、技術審査を通過させません。
登記類型 | 審査を通過しない状況 |
通常登記、簡易登記 | 登記申請の過程において真実状況を隠蔽し、虚偽が含まれていること |
通常登記、簡易登記 | 名称又は識別情報に誤りがある場合 |
通常登記、簡易登記 | 試験報告書或は申請材料が要求に合致していないこと |
通常登記 | 環境リスク評価報告に比較的大きい欠陥が存在し、新化学物質環境リスクに対して全面的な評価を行うことに不足していること |
通常登記 | 環境リスク評価を行う場合、不合理な環境リスクが発見されること、或は環境リスク管理措置が不適切であること |
通常登記 | 高危害化学物質の申請活動の要求事項に適合しないこと |
通常登記、簡易登記 | 6ヶ月以内に試験報告書又は材料を補充しないこと |
簡易登記 | 難分解性で生物蓄積性及び長期毒性を有する申請物質 |
簡易登記 | 環境へのリスクを累積する可能性があること |
4. 企業は届出材料を提出することにより、関連活動を展開することができます。固体廃棄物及び化学品管理技術中心は届出材料をランダムに抽出し、検査を行います。検査を経て、届出条件に合致していなく、通常登記や簡易登記を行う必要がある場合、届出を取り消します。新規化学物質の関連活動を未展開する場合、期限付きで改善させます。すでに新規化学物質の関連活動を行った場合、登記証を取得せずに新規化学物質を生産又は輸入することとみなし、「弁法」第48条の規定に基づき処罰を実施します。
四、データの出所、試験機関及び試験方法
1. 申請データは必要な最低限のデータとその他のデータからなります。必要な最低限のデータは、試験報告書により得られるべきです。その他のデータは、優先的に試験報告書から得られるべきです。試験を行うことができない場合、非試験データの利用も可能ですが、その理由、方法或はデータの出所、根拠などの説明が必要です。
2. 域内の試験機関は法に基づき関連資格を取得しなければなりません。域外の試験機関により提出された物理化学特性データは、ISO 17025又はGLPに適合していることが要求されます。毒性データ又は生態毒性データを提出する試験機関は、GLPの条件や資格をもつことが要求されます。
3. 非現行有効の試験方法で提出された試験報告書について、同試験方法の変更が満5年超となったが、申請者は依然として有効だと判断した場合、新旧試験方法を比較し、試験報告書の信頼性、関連性及び科学性に関する評価を行うべきです。技術審査によって、危害評価の要求に適合しない場合、申請者は変更後の試験方法に基づき改めて試験を行うべきです。
五、必要な最低限のデータ
1. 通常登記及び簡易登記の申請者は、登記類型に基づき、必要な最低限のデータを提出しなければなりません。基本データと特殊要求のデータに分けられます。すべての新規化学物質は基本データを提出しなければなりません。難分解性、生物蓄積性を有する物質について、登記類型に基づき、特殊要求のデータの提出が求められます。
2. 簡易登記の必要な最低限のデータ:物理化学特性、難分解性、生物蓄積性、水性環境急性有害性に関する基本データ。
難分解性及び生物蓄積性を有する新規化学物質は、水性環境慢性有害性に関する特殊要求のデータを提出しなければなりません。
3. 通常登記の必要な最低限のデータ:物理化学特性、毒性、生態毒性に関する基本データ。
難分解性又は生物蓄積性を有する新規化学物質は、毒性、生態毒性に関する特殊要求のデータを提出しなければなりません。
六、高危害化学物質の判定基準
高危害化学物質とは、難分解性(P)、生物蓄積性(B)並びに毒性(T)を有する物質、極めて難分解性(vP)で高い生物蓄積性(vB)を有する物質、及び同程度の悪影響を及ぼす可能性のある物質を指します。
「指南」では、高危害化学物質の判定基準が明確化されました。申請者は基本データに基づき、P、B、T物質の判定基準又は選別基準に従い評価を行います。P、B、T性質を有する可能性がある物質について、P、B、T性質を有する物質とみなすべきです(さらに多くのデータが提出できる場合を除く)。
七、リスク評価報告の要求
「指南」では、新規化学物質環境リスク報告の作成要求を明確にしました。リスク評価のプロセスや評価報告について、より一層高い要求が提出されます。危害評価、ばく露評価、環境リスク判定に関する定量的評価や詳細な参考が提出されます。生物蓄積性の潜在性があり(BCF≧500)、且つ高等動物に潜在的な毒性がある場合、捕食動物(二次中毒)の環境リスク評価を行うことを推奨します。
申請者は関連技術単位を委託し、環境リスク評価報告を作成することができます。申請単位は環境リスク評価を行う技術能力を有する場合、自ら環境リスク評価報告を作成することができます。
八、社会経済効益分析報告の要求
申請者は、高危害化学物質の通常登記と新用途環境管理登記を行う場合、社会経済効益分析報告を提出しなければなりません。
「指南」では、社会経済効益分析報告の作成原則、作成要求、報告形式及び内容要求などを詳しく説明します。申請者は関連技術単位を委託し、社会経済効益分析報告を作成することができます。申請単位は社会経済効益を分析する技術能力を有する場合、自ら社会経済効益分析報告を作成することができます。
九、情報保護及び必要性に関する説明材料の要求
申請者は通常登記、簡易登記又は届出を行う際、提出した申請材料において商業秘密に係る情報がある場合、情報保護を申請することができます。登記又は届出材料を提出する際、情報保護の申請を提出しない場合、後続の申請は不可です。
情報保護が必要であれば、商業秘密に係る情報を保護する必要性に関する説明材料を提出すべきです。説明材料において保護を申請する具体的な情報欄目を明記し、規定の12種類の状況に基づいて逐一説明し、関連証明材料の提出が求められます。
生産又は加工使用の化学物質の工芸プロセス、市場と販売情報、顧客の情報、申請混合物に含有する新規化学物質である混合物の成分と比率、用途(新用途環境管理を行う新規化学物質は除外)と効能、詳細な生産量又は輸入量などに関する情報の保護を申請する場合、関連証明材料を提出する必要はありません。
物質名などの識別情報の保護期限は、登記日又は届出日から5年を超過してはいけません。その他の情報の保護期限は、批准日から申請を撤回する日までの期間であり、或は環境、健康の公共利益に重大な影響を及ぼす恐れがある場合、国務院生態環境主管部門が法に基づき公開する日までの期間です。
国家標準「化学品分類及びラベル規範」(GB30000シリーズ)により健康または環境上の危害分類がなし、且つ物質名などの識別情報が保護されている場合、登記証所持人又は届出者は保護期限満了前6ヶ月前から、保護期限の延長申請を提出することができます。期限までに延期申請がない場合、保護期限の延長を許可しません。
十、ポリマー届出の排除状況
新規化学物質モノマー又は反応体の含有量が 2%未満のポリマー又は低懸念ポリマー、且つポリマー届出の排除状況に該当しない場合、届出を申請することができます。
- カチオンポリマー又は水環境でカチオンポリマーになるポリマー
- 分解しやすいポリマー又は不安定なポリマー
- 数平均分子量≥10,000ダルトンの吸水性ポリマー
- 炭素、硫黄原子に共有結合するパーフルオロアルキル基を含有するポリマー
- 不純物の以外、その他の元素を含むポリマー
届出条件に合致しないポリマーについて、申請者は通常登記又は簡易登記を行うべきです。同時に以下の条件を満たす場合、毒性データ、生態毒性データ及び環境リスク評価報告の免除が申請できます。
- ナトリウム、マグネシウム、カリウム、カルシウム以外のその他の金属を含有しないこと。
- 水、親油性溶剤(オクタノール、ヘプタン)及び通用溶剤(テトラヒドロフラン、N,N-ジメチルホルムアミド)に不溶であること。
- 酸性、アルカリ性条件下で安定性があること、即ちpH 4.0、7.0、9.0と1.2(生理上重要であれば)の条件下で行われる安定性評価の結果は安定性であること。
十一、新用途登記及び再登記
「指南」の規定により、通常登記の形式に従って新用途環境管理登記の申請材料を提出し、通常登記の手順に基づき手続を行います。新用途環境管理登記の申請者は、新用途環境管理登記の申請表、当該物質の新規用途の環境ばく露評価報告及び環境リスク管理制御措置を提出すべきです。高危害化学物質の場合、社会経済効益分析報告の提出が求められ、申請登記用途の必要性を十分に論証します。
通常登記の登記証を取得した新規化学物質は、「中国現有化学物質名録」に収載される前に、次に掲げるいずれかに該当する場合、登記証所持人は改めて登記を行わなければなりません。
実際に生産又は輸入数量が申請登記数量を超過する場合
輸入から生産に変更する場合
申請用途を変更しようとする場合
環境リスク管理措置を変更しようとする場合
環境リスクを増大させる場合(例、工芸条件、生産場所、環境管理要求の変更など)
十二、登記後の追跡管理
1. 初回活動状況報告 登記証所持人或は指定代理人は、初回の生産活動から60日以内、又は初回に輸入し加工・使用者に移送してから60日以内に、初回活動状況報告を提出しなければなりません。
2. 年度報告 通常登記の登記証に環境管理要求に基づき年度報告書の提出が記載された場合、登記証所持人は登記日の次年度から、毎年4月30日までに、新規化学物質の年度報告書を提出しなければなりません。
3. 情報公開 通常登記の生産者又は加工使用者は、初回活動を行った後、環境リスク管理制御措置及び環境管理要求の実施状況を公式サイト、或はその他の公衆が認知しやすい形で公開し、随時更新しなければなりません。
まとめ
7号令と比較すると、12号令は管理制御の重点、登記類型、申請材料の要求、登記後の追跡管理などの内容が全面的に改訂調整されました。企業の新化学物質環境管理の業務に影響を与えるので、申告データの要求、申告期間の管理、事中事後の監督管理などに注意が必要です。
12号令に付属する規範性文書として、「指南」では、12号令における登記の管理範囲、登記類型、データ要求、危害評価、環境リスク評価、社会経済効益分析、新用途環境管理登記、登記後の追跡管理などに関する内容がさらに細分化されます。また、関連フォームと書式が提供され、企業の新化学物質環境管理登記にとって重要な参考文書となります。
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