背景
「ナノマテリアル」とは、非結合の状態にあるか、又は強凝集体(アグリゲート)若しくは弱凝集体(アグロメレート)であり、かつ、個数基準サイズ分布で 50%以上の粒子が、一つ以上の外径が1nmから100nmのサイズ範囲にある粒子を含有する、天然産、又は偶然にできた、又は製造された材料(マテリアル)を意味します。特定のケース、及び環境、健康、安全又は競争力に関する懸念が正当である場合には、個数基準サイズ分布の閾値である50%を、1%~50%の間の閾値に変更してもよいです。
ナノ物質は粒径等が小さいため、従来の材料とは異なる特性や形状を有することによって、これに伴う表面積の増加と量子効果が発見されます。化学的・光学的・電気的・磁気的性質が従来の材料よりも優秀であり、触媒、電子デバイス、磁気デバイスなどへの応用が期待されています。
REACH附属書の改正
欧州委員会は、ナノ材料に対応するため、REACH規則の附属書I、III、VI、VII、VIII、IX、X、XI、およびXIIを改正する委員会規則 (EU) 2018/1881を公布しました。同規則は2020 年 1 月 1 日から適用される予定です。
改正案では、ナノ材料の登録要件を明確にします。
- サイズ、毛形状及び表面の化学特性(附属書VI)
- 化学物質リスク評価報告書(附属書I)
- 登録に必要なデータ(附属書III、VII-XI)
- 川下ユーザーの義務に関する明確化(附属書XII)
改正案を通じて、ナノ材料の定義、化学物質としてREACHにおけるナノ材料の取り扱いが公開されます。ECHAは、ナノ材料の登録者が改正内容を把握し、規則を遵守するため必要な対応を取ることを推奨しています。なお、改正内容が発効する2020年まで、法規遵守を適応するのに十分な時間を与え、登録者及び川下ユーザーが準備を整える方法も確認できます。
企業に与える影響
REACH規則におけるナノ物質を製造又は輸入する企業にとって、取扱うナノものが対象物質になるかどうかを確認して、ハザードの試験や評価の実施を検討する必要があります。
よく使用されている酸化亜鉛、二酸化チタン、二酸化ケイ素、酸化鉄、酸化アルミ及び金属粉末には、ナノ粒子を含むかどうかを判断することが重要になります。
ナノ物質に関する情報の透明性を高めることを目的として、ECHAは公開ウェブサイトであるEuropean Observatory for Nanomaterials(EUON)を設置しました。EUON ウェブサイトからナノ材料に関する情報を検索可能なデータベースにアクセスできます。ただし、現時点ではナノ材料の定義がまだ統一されなく、データ源も異なっているため、ECHAのデータベースと不一致があるようです。
粉末で粒子のサイズが小さくて、早い段階で粒径評価を行い、その結果に基づいてSEM(走査型電子顕微鏡)とかTEM(透過型電子顕微鏡)を使ってナノ材料ではないかということの検証をおすすめします。登録済み及び新規登録のナノ材料すべてに適用されるため、すでに登録済みドシェにおけるナノ材料の関連情報も更新する必要があります。
下記のリンクを通じて、対象のナノ材料であるかどうかを確認することが可能です。
https://euon.echa.europa.eu/search-for-nanomaterials
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