特殊医学用途調整食品は患者の栄養補充及び栄養サポート用の特殊食品として、国際で広く認可される。特殊医学用途調整食品が中国に入る歴史が短くて、早期の応用や発展も緩慢である。近年、国家及び国内各医療機構、組織がこの問題を重視しているので、中国で特殊医学用途調整食品市場は成長を続けている。しかし、中国国内社会、特に消費者や初めて特殊医学用途調整食品業界に参入した企業は特殊医学用途調整食品に対する認知度がまだ低いとのことも否定できない事実である。CIRSは「一般食品、健康食品、特殊医学用途調整食品及び薬品の区別」に関する内容を一度説明したが、今回特殊医学用途調整食品の原料について紹介したいと思う。
中国では、特殊医学用途調整食品は生後0~12ヶ月の乳幼児に適用される特殊医学用途乳児調整食品及び生後1歳以上の対象者に適用される特殊医学用途調整食品に分けられ、ここで生後1歳以上の対象者に適用される特殊医学用途調整食品の原料についてのみ説明する。
1.3種類の特殊医学用途調整食品の定義
「GB 29922-2013食品安全国家標準 特殊医学用途調整食品通則」は3種類の特殊医学用途調整食品の定義を次の表のように規定している。
表1 3種類の特殊医学用途調整食品の定義
製品分類 定義 例 全栄養調整食品 単独食用しても目標対象者の全ての栄養需要を満足できる。タンパク質、脂肪、炭水化物、多種のビタミン及びミネラルなどを含む人体に必要な全ての栄養素を含有する。 / 特定全栄養調整食品 特定の疾患患者に適合し、単独食用しても目標対象者の全ての栄養需要を満足できる。目標対象者の全ての栄養需要を更に満足するために、全栄養調整食品の配合に基づき、特定の疾患患者の特別な代謝異常状況に従って一部の栄養素に対して適当的に調整する。 糖尿病患者に向け特定全栄養調整食品はできるだけ血糖指数が低い(GI≤55)炭水化物を選ぶ。 非全栄養調整食品 目標対象者に1種類或は数種類の栄養素を提供し、単独食品して人体に必要な全ての栄養需要を満足できなくて、その他の食品(一般食品及びその他の特殊医学用途調整食品)と共に食用しなければならない。 タンパク質(アミノ酸)成分は主にタンパク質摂取量を増やすべき患者に向ける。例えば、創傷(火傷)患者、手術後患者など。
その他の種類の食品に比べ特殊医学用途調整食品は特殊で複雑である。その実質は栄養素(目標対象者にとって必要で、種類及び含有量範囲も明確化される)と食品添加物(工芸、製品性状及び水溶性などのために添加される)の組み合わせである。
2.各栄養素使用可能な原料の由来
特殊医学用途調整食品配合の実質(栄養素+食品添加物)を理解する上で、各栄養素使用可能な原料の由来の大体範囲も注意しなければならない。異なる栄養素の種類で使用可能な原料を説明するほうがよいと考える。
1)タンパク質
「GB 29922-2013食品安全国家標準 特殊医学用途調整食品通則」は特殊医学用途調整食品のタンパク質に対する規定は以下の通りである。
全栄養調整食品の高品質タンパク質はタンパク質総量の50%以上を占めなければならない。高品質タンパク質は完全タンパク質とも呼ばれ、種類完備・数量充足・適当な割合の人体に必要なアミノ酸を含有する特徴を示す。一般的に、植物タンパク質より動物タンパク質の栄養価値が高い。
例 よくある高品質タンパク質:乳製品のカゼイン、乳清タンパク質、大豆タンパク質等。
2)脂肪(脂肪酸)
タンパク質と異なり、植物油脂は動物油脂より不飽和脂肪酸の割合が高いので、人体にとって更に有益である。「GB 29922-2013食品安全国家標準 特殊医学用途調整食品通則」は全栄養調整食品に含有する人体に必要な脂肪酸(リノール酸とα-リノレン酸)のエネルギー比率の最低値を規定する。普通な食用植物油はリノール酸とα-リノレン酸を含有し、詳細な割合は下記の通りである。
表2 普通な食用植物油のリノール酸とリノレン酸の含有量
食用植物油名称 | リノール酸含有量(%) | リノレン酸含有量(%) |
向日葵油 | 48.3~74.0 | ≤0.3 |
大豆油 | 48.0~59.0 | 4.2~11.0 |
コーン油 | 34.0~65.6 | ≤2.0 |
菜種油 | 11.0~23.0 | 5.0~13.0 |
サフラワー油 | 67.8~83.2 | ND~0.1 |
注:リノール酸とリノレン酸の含有量範囲は各食用油の国家標準により規定されている。
目標対象者の栄養需要を満足するために、企業は配合設計によって、油脂が選択的に添加することができる。又、元衛生部2012年第16号公告に基づき、中鎖脂肪酸トリグリセリド(食用ヤシ油及びパーム油から由来)の使用も許可される。
3)炭水化物
単糖、二糖、オリゴ糖/多糖、マルトデキストリン、ブドウ糖ポリマー由来の炭水化物は、その主要効能によって利用可能な炭水化物(吸収できるエネルギーを提供)及び食物繊維(小腸に消化吸収できないが人体健康に有益)を分けられる。「GB 29922-2013食品安全国家標準特殊医学用途調整食品通則」に基づき、食物繊維の由来は「GB 14880-2012 食品安全国家標準 食品栄養強化剤使用標準」表C.2に記載される由来を参考しなければならない。
例 フルクトオリゴ糖/フルクト多糖(チコリー由来)、ラフィノース(テンサイ由来)等。
「GB 29922-2013食品安全国家標準 特殊医学用途調整食品通則」は利用可能な炭水化物に対して強制的な要求を規定しなく、企業は製品配合の特性に基づいて炭水化物の由来を選択できる。
例 ブドウ糖ペースト(パウダー)、結晶果糖、マルトデキストリン、デンプン糖、グラニュー糖等。
4)ビタミンとミネラル
三大栄養素と異なり、「GB 29922-2013食品安全国家標準 特殊医学用途調整食品通則」は全栄養調整食品に用いられるビタミンとミネラルの含有量範囲を具体的に規定し、その由来も「GB 14880-2012 食品安全国家標準 食品栄養強化剤使用標準」に明確される。
例 ビタミンB1由来:塩酸チアミン或は硝酸チアミン。
5)選択的な添加成分
「GB 29922-2013食品安全国家標準 特殊医学用途調整食品通則」に記載する選択的な添加成分は人体に必要な栄養成分ではないが、許可された人体の成長発育に有益なものである。ビタミンとミネラルと同じ、選択的な添加成分の含有量範囲は「GB 29922-2013食品安全国家標準 特殊医学用途調整食品通則」に規定され、その原料由来も「GB 14880-2012 食品安全国家標準 食品栄養強化剤使用標準」に明確される。
例 ドコサヘキサエン酸(DHA)由来:微細藻類シゾキトリウム属(Schizochytrium sp)、ウルケニアアモエボイダ(Ulkenia amoeboida)、クリプテコディニウムコニー(Crypthecodinium cohnii)及びツナオイル(Tuna oil)。
6)アミノ酸
目標対象者の栄養需要を満足し、タンパク質の品質を高めるために、アミノ酸の使用も許可された。特殊医学用途調整食品に使用可能なアミノ酸(総計21種)及びその由来(総計35種)は「GB 29922-2013食品安全国家標準 特殊医学用途調整食品通則」の附属書Bに規定され、「GB 14880-2012 食品安全国家標準 食品栄養強化剤使用標準」も一部のアミノ酸の由来に対する要求を明確にする。
例 チロシン由来:L-チロシン(「GB 29922-2013食品安全国家標準 特殊医学用途調整食品通則」に基づき)、且つ非動物由来(「GB 14880-2012 食品安全国家標準 食品栄養強化剤使用標準」に基づき)。
7)プロバイオティクス
1~3歳児を対象者に開発された製品は、「乳幼児調整食品に使用可能な菌種リスト」(原衛生部2011年第25号公告及び補充公告)に基づいてプロバイオティクスを使用しなければならない。3歳以上の対象者向け開発された製品は、「普通食品生産に使用可能な菌種リスト」(原衛生部2010年第65号公告及び補充公告)に基づいてプロバイオティクスを使用しなければならない。プロバイオティクスは特殊医学用途調整食品として単独使用不可、その他の原料と共に使用しなればならない。