国連 GHS改訂10版が発表され、いくつかの変化があり
Source: CIRS

2023727日、GHSの第10次改訂版(Rev.10)がUNECEのウェブサイトで公表されました。本改訂は、専門家委員会が202212月に採択した改訂9版(Rev.9)に関する一連の見直しを参考にし、危険有害性分類のプロセス、試験法、危険有害性の記述及び予防措置、附属書などの重要なセクションが含まれています。国連GHSは、化学物質の危険有害性の分類と情報の伝達に重点を置き、2003年に初版が正式に発行されて以来、2年ごとに改訂されています。

GHS改訂10版には、さまざまな新規条項や改訂条項が含まれています。2021年に発行された改訂9版と比較すると、多くの重要な変更点があります。CIRSグループでは、注目すべきものをいくつかまとめました。

一、物理科学的危険性

爆発物の定義の2.1において、火工品または混合物の定義が「爆発性物質または混合物」としてさらに明確化されました。さらに、「爆発性又は火工効果(Explosive or pyrotechnic effect)」という説明が追加されました。この効果は、衝撃、爆発、破片化、投射、熱、光、音、ガス、煙など、自己持続的な発熱性化学反応から生じる効果ということであります。

「引火性液体」の2.6では、開放式引火点試験の適用性について、「密閉式引火点試験できない場合(粘度のためなど)、または開放式引火点試験データがすでに入手可能な場合」は、開放式引火点試験法は通常密閉式引火点試験法よりも高い値を得るため、試験値から5.6℃を差し引く必要があります。しかしながら、改訂9版では、例外的な状況においてのみ開放式引火点試験が許容されるという簡単な言及があるだけであります。

「可燃性固体」の2.7では、定義のセクションで「金属粉末」を「金属または金属合金の粉末」と説明しています。

鈍性化爆発物の定義はより明確に記述されています。鈍性化爆発物とは、2.17.2 に定める基準を合致するように、爆発性を抑制するために鈍性化された2.1章の適用範囲内の物質または混合物であり、したがって危険区分として「爆発物」に分類されることは免除されます。また、分類判定も「過度に敏感であるか、熱的に不安定であるか」の判定プロセスを含むように改訂されました。改訂9版の判定条件である2.1類の爆発物のピクトグラムと警告文も、混乱を避けるために削除されました。

二、健康有害性

1.3.1章急性毒性において、異なるばく露時間における吸入毒性測定データの換算に関するガイダンスが追加されました。 この計算式では、30 分から 8 時間のばく露時間を換算することができます。  

2. 健康有害性分類に対する非動物試験法の使用については、特に3.2章(皮膚腐食性/刺激性)、3.3章(重篤な眼損傷/眼刺激性)および3.4章(呼吸器感作性または皮膚感作性)に記載されています。非試験的な手法としては、定性的構造活性相関(structure alert SARs)または定量的構造活性相関(QSARs)を予測するコンピュータモデリング、コンピュータエキスパートシステム及び化学物質の有害性を試験データのある類似物質からエキスパートジャッジにより推計する手法(read-across)などがあります。

3.3.2章の皮膚腐食性/刺激性において、read-across及び(QSARから「この種のものではない」結論を導き出すための新たな要求事項が追加されました。皮膚腐食に関する決定的な非試験データは、眼への影響を分類するために使用することができます。

4.呼吸器感作性又は皮膚感作性の3.4 に、ヒトのデータに基づく分類に関する新たな説明が追加されました。その物質が皮膚感作により多数の人に感作を引き起こす可能性があるという証拠がある場合、その物質は皮膚感作性物質の区分1に分類されます。標準動物データに基づく分類の項では、皮膚感作性物質区分1とそのサブ区分は、放射性同位体を用いた局所リンパ節試験(LLNA)の結果に基づいて分類できることが追加されました。

三、環境有害性

本章の改訂は主に、より正確で明確な表現にするための語句の変更と修正であります。例えば、最後に、「本章の基準に従って、この危険有害性分類に区分される物質および混合物の特定のラベル要素を列挙する」という文が挿入されました。この文章はほとんどの章で取り上げられており、改訂10版ではより一般的な改訂となっています。

四、水性環境有害性に関する附属書の内容

有機金属化合物及び有機金属塩の分類に関する新しいガイダンスが附属書 9 に追加され、金属と無機金属化合物の M 係数が追加されました。この係数は、水生環境に有害と分類された物質(急性毒性区分1及び慢性毒性区分1)の濃度にのみ適用され、合計によって物質を含む混合物の分類を導き出すために適用されます。

五、危険有害性の記述及び予防措置

1.ラベルに十分なスペースがない場合、同程度の重篤度の健康有害性について、複数の危険有害性情報を併記することができます。ただし、組み合わせる場合は、重複した文章のみを削除することができます。 例えば、H317H340H350の危険有害性情報を組み合わせて、「アレルギー性皮膚反応、遺伝性欠陥、発がん性を引き起こす可能性がある」とすることができます。

2. H315+H319を追加して、「皮膚刺激性、眼に対する重篤な刺激性を引き起こす」という危険有害性の記述にします。

3.様々な危険有害性の分類において、いくつかの予防措置が削除、修正、追加されました。例えば、急性毒性-経皮区分3に予防的記述P262P264P270が追加されました。呼吸器感作性に関する予防的記述は、下表に示すように大幅に変更されました。

Prevention

Response

Storage

Disposal

Rev. 9

Rev. 10

Rev. 9

Rev. 10

Rev. 9

Rev. 10

Rev. 9

Rev. 10

P261

P284

P233

P260

P271

P280

P284

P304 + P340

P342 + P316

 

P304 + P340

P342 + P316

-

P403

P501

P501

CIRSの考え

今回の改正により、分類プロセスがある程度直感的かつ明確になりました。これは、化学物質のGHS分類をさらに明確にし、また、各国のGHS規制の策定・更新のための新たな参考資料となり、有害化学物質のラベルやSDS作成のより科学的な指針もなります。

当社のサービス

  • EU-REACHCLP-REGULATION (EC) No 1272/2008
  • 中国GHS-GB/T 17519-2013&GB/T16483-2008
  • 日本GHS- JIS Z 7252:2019/JIS Z 7253:2019
  • 日韓GHS-MOEL No.2020-130
  • 台湾GHS-CNS 15030
  • アメリカGHS- Hazcom 2012
  • カナダGHS- WHMIS 2015
  • トルコGHS- SEA No. 28848/ SEA No. 29204
  • ブラジルGHS- NBR 14725:2012
  • メキシコGHS- NMX-R-019-SCFI-2011
  • マレーシアGHS- CLASS Regulations 2013/ICOP 2019
  • タイGHS- B.E. 2555
  • インドネシアGHS- Regulation No. 23/M-IND/PER/4/2013
  • ベトナムCircular No. 04/2012/TT-BCT
  • シンガポールSS586: 2021
  • オーストラリアWHS Regulations 2022
  • ニュージーランドHazardous Substances (Hazard Classification) Notice 2020
  • その他の国や地域のGHS作成:ロシア、東南アジア、湾岸地域、フィリピン、中東など
  • SDS/MSDSの翻訳(EU加盟国の言語を含む複数の言語に対応出来ます)
  • SDS/MSDSの更新