ビッグ・ニュース! ブラジル版REACHが施行される見込み!
Source: CIRS

2023年9月26日、ブラジル下院の憲法・司法・公民権委員会(CCJC)は、国家化学品総合法案(PL 6120/2019)を通過し、上院に提出されました。

同法は、ブラジルで生産または輸入される危険有害性を有するすべての化学物質に関する情報を収集する国家データベースとして、国家化学物質リストの設立を政府に要求します。ブラジルは、ペルー、チリ、コロンビアに続き、南米で4番目に化学物質管理規制を設ける国となります。

規制対象外物質

1.放射性物質

2.開発中の化学物質

3.研究専用物質

4.分離不可能な中間体

5.国家防衛用化学物質

6 廃棄物

7.通関規制の対象となる化学物質、混合物および成形品で、処理または変成を伴わないもの

8. 空気、光、湿度、微生物などの環境要因の影響により、保管中に化学反応により意図せずに生成される物質。

9.特定の規制により管理される以下の物質:

  1. 食品
  2. 技術的製造補助剤
  3. 食品添加物
  4. 医薬品、原薬、医療用ガス。
  5. 農薬および関連製品、プレミックス及び技術製品
  6. 化粧品、パーソナルケア製品、香水
  7. 消毒剤
  8. 動物用医薬品
  9. 飼料
  10. 肥料、植菌剤及び矯正剤
  11. 木材保存剤
  12. 環境修復剤

10.化学物質の分類および表示に関する世界調和システム(GHS)の基準および要求事項に従い、健康または環境に有害な物質として化学的に修飾または分類された/含有する物質を除く、以下の物質:

  1. 鉱石およびその精鉱、ならびに石炭およびコークス、原油、天然ガス、液化石油ガス、 天然ガスコンデンセート、ガス、鉱物生産工程の成分を含むその他の岩石および鉱物
  2. 天然物質
  3. 製粉、圧搾、抽出によって抽出された油脂、エッセンシャルオイル、固定油は、精製後であっても、元の製品と同じ特性を持つ必要
  4. ガラス、釉薬、陶磁器

11. 麻薬、向精神薬、免疫抑制剤

12. タバコおよびタバコ製品の原料としてのみ使用される化学物質

13. 構造用のプレート、シート、ストリップ、ビレット、インゴット、ビームおよびその他類似の形状の金属合金および金属

14. 爆発物およびその付属品

化学物質の申告

化学物質単独または混合物の成分として、1t/a(過去3年間の平均)以上の量を生産・輸入するのは申告が必要であり、1t/a以上の量のポリマー自体も申告が必要であります。特定の化学物質については、政府は1t/a未満の申告基準を設けることができ、懸念の低い混合物、成形品、ポリマーは申告の必要はありません。

申告すべき情報:

  • 化学物質の製造者または輸入者に関する情報
  • 化学物質の年間生産量または輸入量
  • CAS番号またはIUPAC名を含む化学物質の識別情報
  • 現行のブラジルGHS基準に基づく危険有害性の分類情報
  • 化学物質の使用目的に関する情報

上記の情報に変更があった場合は、翌年の3月31日までに情報を更新する必要があります。

国家化学物質リストに提出された情報は公開されますが、個人情報は「情報公開法」第31条に従って保護されます。産業上または商業上の秘密は機密情報とみなされ、製造業者または輸入業者は、化学物質の識別情報およびCAS番号情報の保護を、規則に従って最長5年間要求することができます。

新規化学物質の登録

化学物質リストが制定されると、リストに収載されない化学物質は新規物質となります。年間1トン以上の量を生産・輸入する新規化学物質または混合物は、上記の申告情報に従って登録しなければなりません。新規化学物質が化学物質の優先評価に関する以下のスクリーニング基準を満たす場合、製造業者または輸入業者には追加情報の提供も求められ、具体的な情報要件は年間生産量または輸入量の範囲に基づいて決定されます。

リスク評価

優先評価化学物質のスクリーニング基準

  1. 難分解性と環境毒性
  2. 生物蓄積性と環境毒性
  3. 難分解性、生物蓄積性及び環境毒性
  4. 発がん性、変異原性または生殖毒性
  5. 科学的根拠に基づく内分泌かく乱物質の特性
  6. 人体または環境へのばく露に等しく有害であること
  7. ブラジルが署名した協定または国際条約に含まれる物質

また、上記の基準を満たさないが、科学的根拠に基づき、人の健康や環境に深刻な影響を及ぼす可能性のある化学物質についても、優先評価の対象となります。ブラジル政府は、化学物質評価技術委員会と化学物質審査委員会を設置します。化学物質評価技術委員会は、技術的論拠に基づいてリスク評価の優先順位をつけるべき化学物質を提案し、化学物質審査委員会に提出して、化学物質審査委員会は、化学物質のリスク評価に関する作業計画を定期的に公表します。リスク評価を支援するために、化学物質審査委員会は、国内および国際的に認可された機関から提供された情報や研究を利用し、製造業者や輸入業者に対して情報、研究及びに追加の安全データシートの提供を要求することができます。規定に基づき、製造業者や輸入業者が必要な情報や追加研究を提供する期限は120日であり、重要なのは、動物実験は化学物質の危険性を判断するための最後の手段として考慮されるべきであり、すべての代替手段を使い果たした場合にのみ使用されるべきであリます。

リスク制御措置

化学物質審査委員会は、リスク評価の結果に基づき、以下のリスク制御措置のうち1つ以上を採用することを決定することができる:

  • 化学物質に関する情報普及・宣伝戦略の改善
  • 製造業者および輸入業者に対し、リスク低減のためのリスク制御計画の策定と実施
  • 関係する化学物質、混合物又は成形品のラベル表示及び安全データシート(該当する場合)の調整
  • 混合物又は成形品中の化学物質の濃度限度値の設定
  • 化学物質の製造、輸出入、取引、使用の制限
  • 化学物質の製造と輸入を管理するための授権
  • 化学物質の製造、輸出入、貿易および使用の禁止

リスク制御措置の対象となる化学物質の製造業者および輸入業者は、定期的に国家化学物質リストに情報を提供すべきであるが、その具体的な頻度や内容は化学物質審査委員会が決定します。

さらに法案は、ブラジル市場における外国製造業者の役割に対処するため、「独占的代理人」(EUの唯一の代理人に類似)の概念を導入し、ブラジル企業が外国製造業者の代理人として活動し、ブラジルにおけるすべての責任と義務を負います。

この規制の下では、ブラジル政府は規制の公表から180日以内に細則を制定し、また、国家化学品名録を効果的に実施するために3年以内に必要なコンピュータ化システムを開発または適応させる必要があります。

CIRSの考え

今年8月の中国化学工業報のニュースによりますと、ブラジル化学工業協会の統計により、2023年7月、ブラジルの化学品の輸入額は51億ドルに達し、輸入量は500万トンで、今年これまでの輸入額の最高記録であり、輸入量が330万トンであった2月に比べて50%急増しました。ブラジルの化学品輸入は年々増加しているため、ブラジルの国家化学品総合法案が承認されたのは、ブラジルの化学産業にとって重要であるだけでなく、ブラジルの国際的地位にも広く影響を与えることを意味します。CIRSは今後もブラジルの化学物質規制の進展を監視し、最新のアドバイスを化学業界にタイムリーに提供していきます。