英国、4-MBCおよび16種類のCMR物質の禁止、ホルムアルデヒド放出体の表示閾値引き下げを提案
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2025年10月31日、英国は世界貿易機関(WTO)に対し、G/TBT/N/GBR/107号通知を提出し、「2026年化粧品(化学物質制限)規則」の草案を公布しました。これは、英国の化粧品規制である「規則(EC)No 1223/2009」(UK Regulation No. 1223/2009)を修正するものです。主な改正内容は、4-メチルベンジリデンカンフル(4-MBC)の化粧品での使用禁止16種類のCMR(発がん性、変異原性、生殖毒性)物質の禁止、およびホルムアルデヒド放出体のラベル表示閾値の引き下げが含まれています。本草案の意見提出期限は2025年12月30日です。

主な修正内容

1)4-メチルベンジリデンカンフル(4-MBC)の化粧品での使用禁止

4-メチルベンジリデンカンフル(4-Methylbenzylidene Camphor)(4-MBC)(CAS番号 36861-47-9, 38102-62-4)は、現在「英国化粧品規則」(UK Regulation No. 1223/2009)の附属書VI「使用可能なUVフィルターリスト」に収載されており、化粧品中の最大使用濃度は4%とされています。

22025年5月、英国の非食品・非医薬品消費者製品化学安全性科学諮問グループ(SAG-GS)は、4-MBCをUVフィルターとして化粧品に使用することに関する評価意見を公表しました。SAG-GSのメンバーは、4-MBCが生体内(in vivo)試験で潜在的な内分泌かく乱特性を示したという点で一致しました。安全性については、十分な遺伝毒性データや生殖/発生毒性データの不足、および潜在的な内分泌かく乱作用への懸念など、依然として多くの疑問が残されています。現時点で評価に利用できるデータが限られていること、そして潜在的な遺伝毒性および内分泌かく乱リスクが存在することから、SAG-GSは、日焼け止め製品やその他の化粧品における4-MBCの安全性について明確な結論を出すことができませんでした。

以上の評価意見に基づき、英国は化粧品中での4-MBC使用を禁止する予定です。具体的には、4-MBCを付属書VIの認可UVフィルターから削除し、付属書IIの禁止物質リストに収載する方針です。

番号

化学名称/INN

CAS番号

EC番号

1744

3-(4-Methylbenzylidene)-d1

camphor/Enzacamene

38102-62-4/36861-47-9

253-242-6

  • 移行期間:4-メチルベンジリデンカンフル(4-MBC)を含む化粧品は、2026年7月15日以降、イングランド、ウェールズ、スコットランドにおいて上市できなくなり、2027年1月15日以降、同地域での販売も禁止されます。

2)16種類のCMR物質の禁止

英国は、以下の16種類の物質を「カテゴリー1B」または「カテゴリー2」に分類される発がん性、変異原性、または生殖毒性を有するCMR物質を、英国化粧品規則の附属書II(禁止物質リスト)に収載し、化粧品での使用を禁止する計画です。

番号

化学名称/INN

CAS番号

EC番号

1745

Diphenyl(2,4,6-trimethylbenzoyl)phosphineoxide

75980-60-8

278-355-8

1746

clothianidin (ISO); (E)-1-(2-chloro-1,3-thiazol-5-ylmethyl)-3

-methyl-2-nitroguanidine

210880-92-5

433-460-1

1747

Dimethyl propylphosphonate

18755-43-6

242-555-3

1748

Dibutyltin maleate

78-04-6

201-077-5

1749

Dibutyltin oxide

818-08-6

212-449-1

1750

2,2’, 6,6’-tetrabromo-4,4’-isopropylidenediphenol; tetrabromobisphenol-A

79-94-7

201-236-9

1751

1,4-Benzenediamine, N,N'-mixed Ph and tolylderivs.

68953-84-4

273-227-8

1752

4-Methylimidazole

822-36-6

212-497-3

1753

Acetone Oxime

127-06-0

204-820-1

1754

Benthiavalicarb isopropyl (ISO); isopropyl [(S)-1-{[(R)-1-(6-

fluoro-1,3-benzothiazol-2-yl)ethyl]carbamoyl}-2-methylpropyl]carbamate

177406-68-7

 

1755

2,3-epoxypropyl neodecanoate

26761-45-5

247-979-2

1756

Multi-walled carbon tubes (synthetic graphite in tubular shape) with a geometric tube diameter range≥ 30 nm to < 3 µm and a length≥ 5 µm and aspect ratio > 3:1, including

MultiWalled Carbon Nanotubes, MWC(N)T

  

1757

7-oxabicyclo[4.1.0]hept-3-ylmethyl 7-oxabicyclo [4.1.0] heptan- 3-carboxylate

2386-87-0

219-207-4

1758

2-(dimethylamino)-2-[(4-methylphenyl)methyl]-1-[4- (morpholin-4-yl)phenyl]butan-1-one

119344-86-4

438-340-0

1759

  1. metolachlor (ISO); 2-chloro-N-(2-ethyl-6-methylphenyl)-N -[(2S)-1-methoxypropan-2-yl]acetamide; (R a S a)-2-chloro-N

-(6-ethyl-o-tolyl )-N-[(1S)-2-methoxy-1-methylethyl]acetamide

[contains 80-100 % 2-chloro-N-(2-ethyl-6-met hylphenyl)-N

-[(2S)-1-methox-ypropan-2-yl]ace tamide and 0-20 % 2-chloro

-N-(2-ethyl-6-met hylphenyl)-N-[(2R)-1-methoxypropan-2

-yl]ace tamide]

87392-12-9

 

1760

Trimethyl borate

121-43-7

204-468-9

  • 移行期間:上記のCMR物質を含む化粧品は、2026年8月15日以降、イングランド、ウェールズ、スコットランドにおいて上市できなくなり、2027年2月15日以降、同地域での販売も禁止されます。

3)ホルムアルデヒド放出体のラベル表示閾値の引き下げ

2025年5月、SAG-GSは、化粧品中のホルムアルデヒド放出体に関する評価意見を更新しました。更新内容によると、現行規定の0.05%のラベル表示閾値では、消費者を十分に保護することができないと指摘されています。既存の科学的根拠に基づき、専門家グループは、ホルムアルデヒド放出体が洗い流す類または洗い流さない類の化粧品に使用される場合、ラベル表示閾値を10 mg/kg(10 ppm)または0.001%にまで引き下げるべきであるという見解で一致しました。

上記の評価意見に基づき、英国は英国化粧品規則の附属書V(使用可能な防腐剤リスト)に定める序文の第2段落を、以下の内容に置き換える予定です:
「附属書にリストされているホルムアルデヒド放出体を含む全ての化粧品において、ホルムアルデヒドの濃度が0.001%を超過する場合は、警告表示『releases formaldehyde(ホルムアルデヒドを放出します)』を記載しなければならない。」

  • 移行期間:付属書に記載されているホルムアルデヒド緩放出体を含む化粧品は、2026年7月15日以降、イングランド、ウェールズ、スコットランドにおいて上市できなくなり、2027年1月15日以降、同地域での販売も禁止されます。

詳細情報:

https://members.wto.org/crnattachments/2025/TBT/GBR/25_07356_00_e.pdf

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