農薬登録管理に大変更 ~5つの規制の改正版が公表~
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3年余りにわたる検討を経て、「農薬登録管理弁法」など5つの規制の最終版がこのほど公表されました。

2022年4月に農業農村部農薬管理司が初めて「農薬登録管理弁法」、「農薬生産許可管理弁法」、「農薬経営許可管理弁法」、「農薬ラベル及び説明書管理弁法」、「農薬登録試験管理弁法」の5つの規制に対する意見・提案の募集を開始して以来、2023年初頭に同管理司が「農薬登録管理弁法」等の修正草案(意見募集稿)を再度公表しました。2024年11月4日には、農業農村部が「農薬登録管理弁法」等5つの規制を改正する決定(意見募集稿)に関する意見募集通知を三度公表、そして直近の農業農村部第3号令及び第925号公告により、ようやく最終的な方向性が確定しました。

一、「農薬登録管理弁法」の主な改正点

(一)第八条を次のように修正

「農薬の有効成分含量及び剤型の設定は、品質向上・環境保護・農業の持続可能な発展を促進する原則に適合しなければならない。製剤製品の処方は科学的・合理的で、かつ使用しやすいものでなければならない。」

「同一有効成分かつ同一剤型の単剤製品の有効成分含有量の区分は3つを超えてはならない。」

「混合製剤の有効成分は2種類以下とし、ただし除草剤および種子処理剤については3種類以下とする。同一有効成分かつ同一剤型の混合製剤の配合比は3つを超えてはならず、同一配合比の総含有量の区分も3つを超えてはならない。希釈や分散を行わず直接使用される低含量有効成分農薬は、別途分類する。」

「フェロモン等の誘引・交信かく乱型製品は、主な有効成分に基づいて登録する。」

「製剤製品の有効成分の種類及び含有量の区分に関する具体要件は、農業農村部が別途制定する。」

CIRS専門家によるポイント解説: 主な変更点は、フェロモン等の誘引・交信かく乱型製品について、主な有効成分に基づいて登録することを明確化し、製品中に含まれる有効成分の数は制限されなくなりました。

(二)第十四条に新規追加、第1項とする:

「申請者が法人その他の組織である場合、所属組織の専任担当者を指定し、農薬登録申請に関する業務を担当させなければならない。」

(三)第十五条に新規追加、第2項とする:「他の組織または個人に農薬登録業務を代行させる場合、双方の署名または押印入りの委任状を提出しなければならない。委任状には、代理人の氏名または名称、委任事項、権限等を明記すること。」

CIRS専門家によるポイント解説:主な変更点は、他の組織・個人に農薬登録業務を委託する場合に委任状を必要とすることを定めた点である。これは、登録資料の提出プロセスにおいてコンサルティング業者の関与を正式に位置付けるものと言えます。

(四)第十七条第1項を削除。

「新農薬登録を申請する際には、新農薬原体および新農薬製剤の登録申請を同時に行い、当該の標準製品も提供しなければならない。また、新農薬登録日から6年間は、他の申請者が自ら取得した、または新農薬登録証保有者の同意を得たデータを提出して登録を申請する場合、それは新農薬登録申請として取り扱う。」

(五)第十八条第1項を次のように修正:

「初回登録を取得した、または新規化合物を含む農薬については、登録日から6年間、他の申請者が当該新規化合物を含む農薬の登録を申請する場合は、当該登録証保有者からの完全な登録資料への授権を得なければならない。ただし、自ら取得したデータを提出する場合は除く。」

さらに新規内容を追加、第2項とする:

「他の申請者が自ら取得したデータを提出して前項の農薬登録を申請する場合、本弁法第17条の規定に基づいて処理する。」

CIRS専門家によるポイント解説:主な変更点は、新規有効成分の農薬登録証保有者が持つデータに対する保護権利を明確化しました。保護期間(登録後6年間)中に他の申請者が登録を申請する場合、原則として登録証保有者の授権が必要です。ただし、新有効成分の登録から6年以内であっても、他の申請者が自らのデータを提出する場合は、新農薬登録として扱われ、原体および製剤の登録を同時に行う必要がある。

(六) 旧第十八条第2項を第十九条に変更、次のように修正:

「『農薬管理条例』第十四条の規定に基づき農薬登録資料を譲渡する場合、譲受側は以下の資料をもって農薬登録を申請するものとする。
(一)双方の譲渡契約書;
(二)農薬登録資料の要求に基づき補足・整備された関連資料;
(三)元の農薬登録証保有者による当該登録証の抹消申請。」

CIRS専門家によるポイント解説:この条項は前回の意見募集稿にはなかった新規追加条項です。農薬登録資料を譲渡する際に提出すべき資料を明確にしたものであり、特に注目すべきは「農薬登録資料の要求に従って補足・整備された関連資料」です。すなわち、譲渡側の資料が不完全な場合、譲渡された資料を用いて登録を申請する方法を示唆しており、実務上重要な規定です。

(七) 旧第二十条を第二十一条に変更、次のように修正:

「省級農業農村部門は、申請受理の日から20営業日以内に申請者の提出した資料に対する予備審査を完了し、予備審査意見を提出するとともに、その意見と申請資料全体を5営業日以内に農業農村部に直接送付しなければならない。

予備審査が不合格となった場合、省級農業農村部門は申請者の意思に基づき、書面で申請者に通知し、理由を説明するものとする。」

CIRS専門家によるポイント解説:省級農薬検定機関の責任を明確化し、予備審査意見の重要性を強調しました。

(八) 旧第二十一条第1項の改正及び第2項の追加:

旧第二十一条第1項の「~しなければならない」を「所属する農薬検定機構が担当し(実施する)」に修正。

さらに新規一項を追加し、第2項とする:

「農業農村部所属の農薬検定機関は、技術審査の中で申請資料に軽微な不備があり補正が必要と判断した場合、申請者に対し5営業日以内に関連資料を補足するよう求めることができる。なお、補足所要の期間は審査期間に算入しない。」

(九) 旧第二十三条を第二十四条に変更、次のように修正:

「農薬登録申請が受理され、技術審査に入る前であれば、申請者は登録申請を撤回することができ、関連資料を補足・整備した上で再申請することができる。
農業農村部は、農薬登録審査委員会の意見に基づき、申請者に指定期間内での資料補足を求めることができる。」

CIRS専門家によるポイント解説:資料補足の時間的制限と条件を明確化しました。また、登録申請を取り下げる条件が更新され、より柔軟な対応が可能になりました。

(十) 新規条項追加

「第二十五条 農薬登録審査・評価の過程において、提出データの検証が必要が必要と判断された場合、農業農村部は検証試験を展開することができ、所要時間を申請者に通知する。」

「第二十六条 農業農村部の審査で不承認となった製品について、申請者が再度登録を申請する場合、以前提出した対応する登録資料を使用することができる。具体的な要件は農業農村部が別途定める。」

CIRS専門家によるポイント解説:いずれも新規追加の条項です。第二十五条は検証試験の合法性を確定するものです。第二十六条は、2025年1月20日に農薬検定所が公表した「不承認製品の再申請に関する事項の細則化通知」の規定を合法化したものです。

(十二) 第三十一条・第三十二条の変更

第三十一条:農薬登録証保有者が名称を変更、または企業合併・分立を行い、農薬登録証を再交付することが必要な場合、変更発生の日から30日以内に農業農村部へ申請し、関連証明資料を提出しなければならない。
農業農村部は申請を受理した日から20営業日以内に審査を完了し、条件を満たす場合は新証書を再交付する。

第三十二条 :農薬登録証の有効期間内に、以下のいずれかに該当する場合、保有者は農業農村部に変更申請を行わなければならない。
(一)農薬の使用範囲、使用方法または使用量を変更する場合;
(二)農薬の有効成分以外の配合成分を変更する場合;
(三)製品の毒性区分を変更する場合;
(四)原体製品の有効成分含量が変化した場合;
(五)製品の品質基準が変化した場合;
(六)農業農村部が規定するその他の場合。

(十九) 旧第四十条への追加、第3項とする:

「(三)農薬登録証保有者が名称変更または合併・分立を行い、新たな農薬登録証が交付された場合。」

旧第四十条は以下のとおり:

第四十条 次のいずれかに該当する場合、農業農村部は農薬登録証を抹消し、公表する:

(一)有効期間満了後に更新されなかった場合;
(二)登録証保有者が法により消滅、または登録申請資格を喪失した場合;
(三)登録資料が法に基づき譲渡された場合;
(四)登録証を抹消すべきその他の場合。

CIRS専門家によるポイント解説:従来の「登録証保有者の変更」から、「保有者の名称変更や企業合併・分立に伴う登録証の再交付」に表現が変わりました。今後は登録証保有者を変更することが難しくなる可能性があります。

(十六) 旧第三十五条を第三十八条に変更、次のように修正:「農薬登録証保有者は、農薬製品の安全性・有効性の変化状況を収集・分析し、速やかに農業農村部へ報告しなければならない。農薬製品のリコールや農薬使用事故が発生した場合、所在地の農業農村部へ速やかに報告すること。」

(十七) 旧第三十六条を第三十九条に変更、次のように修正:「登録から15年以上経過した農薬品種について、農業農村部は生産・使用状況や産業政策の変化に基づき定期的評価を行い、その結果を登録更新審査の重要な根拠とする。
定期的評価には以下の内容を含む。

(一)標的生物の薬剤耐性;
(二)作物の安全性;
(三)農産物の品質安全;
(四)人畜の健康安全;
(五)有益生物の安全及び生態環境への影響。」

CIRS専門家によるポイント解説:中国もいよいよ農薬の周期性評価(再評価) の段階に入ろうとしています。これはEUや米国の再審評(再登録) と趣旨を同じくするものです。企業はこの周期性評価を重視する必要があります。

二、「農薬生産許可管理弁法」の主な改正点

(一)旧第十八条第2項を第十九条に変更、次のように修正:

「農薬生産企業は、その農薬生産許可の範囲内で、『農薬管理条例』第十九条の規定に基づき、新農薬の研究者や他の農薬生産企業からの委託を受けて農薬の加工または分装を行うことができる。また、中国に農薬を輸出する企業からの委託を受けて農薬を分装することもできる。しかし、農薬原体(原薬)は委託生産してはならない。」

(二)第二十条、第二十一条を新規追加:

第二十条:委託者と受託者は、委託加工・分装する製品の名称、規格、数量、品質基準、ラベル、商標使用、期間、費用等内容を明確にした委託契約を締結しなければならない。

委託者は、受託者に対し、委託加工製品の処方、製造工芸及び技術、製品の品質基準等の技術資料を提供しなければならない。

第二十一条:委託加工、分装を名目として、農薬登録証を貸し出しまたは譲渡することを禁止する。

CIRS専門家によるポイント解説:原薬(原薬)の委託生産が禁止されるとともに、委託者と受託者が契約を結ぶ必要性など詳細な事項が規定されました。これは委託生産の透明性と責任の所在を明確化するものです。

三、「農薬経営許可管理弁法」の主な改正点

(一)第二十一条を次のように修正:

「インターネットを利用して農薬を経営する者は、農薬経営許可証を取得しなければならず、かつオンライン運営開始後20日以内に、ウェブサイト名、ネットワークプラットフォーム名、アプリケーション名等を許可証発行機関に届け出なければならない。ただし、衛生用農薬の経営、及び農薬生産企業が自社ウェブサイトを利用して自社製品を販売する場合は除く。」

「2026年1月1日以前に既にオンライン運営を開始しているインターネット農薬経営者は、2026年1月31日までに届出を完了しなければならない。」

「使用が制限された農薬及び農業農村部が規定するその他の農薬は、インターネットを利用して経営してはならない。
経営範囲を超えて使用が制限された農薬を経営し、またはインターネットを利用して前項で規定された農薬を経営した場合、農薬経営許可証未取得として取り扱う。」

(二)第二十二条 「インターネットで農薬を経営する者は、そのウェブサイトのホームページまたは経営活動のメインページの見やすい位置に、農薬経営許可証に記載された情報全体またはそのリンクを持続的に表示しなければならない。農薬経営許可証の情報に変更が生じた場合は、10営業日以内にページ内容を更新しなければならない。」

「農薬生産企業が自社サイトで自社製品を販売する場合も、農薬生産許可証の情報について同様の表示義務を負う。インターネットを利用して農薬を経営する場合は、実際に販売する製品のラベル等の情報を完全・真実・正確に表示しなければならない。」

(三)第二十三条 「農薬インターネット取引サービスを提供する第三者プラットフォームは、農薬経営資格の確認、ネット経営行為の監督、農薬情報の表示、農薬の実名購入、取引記録の保存、苦情・通報処理等の管理体制を確立・実施し、農業農村部の監督・執行に積極的に協力しなければならない。」

CIRS専門家によるポイント解説:ネットショッピングの普及に伴い、時代の変化に合わせてインターネット上での農薬経営者の義務と責任を明確化・規範化しました。

特に注目すべき点は、農薬の抱き合わせ販売に関する条項が最終版には盛り込まれなかったことです。

四、「農薬ラベル及び説明書管理弁法」の主な改正点

(一)「農薬製剤製品には使用する原体(原薬)の登録証番号と生産企業名を表示しなければならない。関連情報は追跡可能な電子情報コードで表示でき、その真実性については当該製剤製品の登録証所有者が責任を負う。」

CIRS専門家によるポイント解説:製剤に使用された原体の登録証番号と生産企業名を表示することは、原体メーカーが製剤メーカーに対して出所証明の提供をさらに規範化するものです。その後の実際の生産過程でも、登録済みの原薬を使用して製剤を生産し、原薬サプライヤーの情報を体现する必要があります。

(二)「同一の登録証番号を持つ農薬製品は同一商標を表示しなければならず、委託加工・分装された製品には受託者の商標を表示してはならない。」

CIRS専門家によるポイント解説:以前意見募集段階での「一証一標(1登録証1商標)」から、「一証同標(1登録証で同じ商標)」に変更されました。正式公布版は、企業が1つの登録証で複数の商標(例:企業の商標と製品の商標)を同時に表示する必要性を十分に配慮しています。同時に、委託加工・分装製品が受託者の商標を表示することを禁止し、委託加工・分装製品であっても委託者(登録証保有者)の商標のみを表示することを規定しました。これにより、現在行われている委託加工において製品ラベルに受託者の商標を表示する行為が抑制されます。

(三)「農薬製品が耐除草剤作物に登録される場合は、対象となる作物品種名を表示しなければならない。耐除草剤遺伝子組換え作物に使用される場合は、対象作物と形質転換体の名称を表示する必要がある。」

CIRS専門家によるポイント解説:現在の農業生産における除草剤耐性作物は、主に遺伝子組換えと非遺伝子組換え(育種) の2種類に分けられます。いずれの製品も第925号公告に基づき明記が求められます。

(四)「農薬製品の使用時に特定の補助剤を添加する必要がある場合は、その補助剤に関連情報を表示しなければならない。」

CIRS専門家によるポイント解説:ドローン散布の普及に伴い、多くの農薬製品で外部の補助剤を併用することが必要となっています。この場合、登録時には該当する補助剤と農薬を併用した圃場薬効試験資料の提出が必要となります。

五、「農薬登録試験管理弁法」の改正点

(一)第十六条を次のように修正:
「農薬登録試験を実施する前に、農薬登録申請者は農業農村部が定める手続きと要件に基づき、農業農村部農薬管理情報プラットフォームを通じて、試験実施地の省級農業農村部に届け出を行わなければならない。」

「前項の届出情報には、届出主体、有効成分名称、有効成分の含有量及び剤型、試験項目、試験場所、試験機関、試験開始時間、試験機関との委託契約、安全対策等を含む。新農薬試験の届出には、作用原理と作用方式も含めなければならない。なお、試験項目、場所、機関等に変更が生じた場合は、農薬登録申請者は前項規定に基づき再度届け出を行わなければならない。」

CIRS専門家によるポイント解説:試験届出プラットフォームが、「中国農薬デジタル監督管理プラットフォーム」から「農業農村部農薬管理情報プラットフォーム」に変更されました。試験機関・場所・項目に変更がある場合は、再届出が必要である。

※これらの規制は、2026年1月1日から施行されることにご注意ください。

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