化粧品における香料の安全使用要求
Source: CIRS

香料とは、特定の官能基や特定の化学構造を持っているため、人間の嗅覚で香りを嗅ぎ分けることができる天然または人工的に合成された物質を指します。化粧品には少量で使われていますが、欠かせない原料です。しかし香料の広範な使用に伴い、安全性の問題も注目されています。

1.国際香粧品香料協会(IFRA)の実施要綱

国際香粧品香料協会(International Fragrance Association、IFRA)は1973年に設立され、香料の使用量標準の決定に力を入れています。主に米国香粧品香料研究所(Research Institute for Fragrance Materials,RIFM)の安全評価結果を実施要綱(IFRAスタンダードを含む)を制定しました。香料の管理は主に否定リストと制限リストの方式を採用し、使用禁止、使用制限と規格設定の標準などに分けられます。

IFRAスタンダードはこれまでに50回改訂され、2021年6月に50回目の改訂を実施すると通知したが、今回の改訂ではメンチラクトン(CAS 13341-72-5)の香料成分としての使用禁止に対する標準のみが発表され、その他の情報は2020年1月10日に発表された49回目の改訂内容と一致しています。注目すべきは、49回の改訂では、安全性評価因子(SAF)の改訂と全体暴露モデルの使用を含む「香料の定量的リスク評価改訂方法(QRA 2)」が導入され、IFRAスタンダードにおける香料製品のカテゴリーが11から12に調整されました。IFRAスタンダードの49回目の改訂における製品カテゴリーのまとめは以下のとおりです。

カテゴリ

製品タイプ

1

口唇に適用される製品

2

脇の下に適用される製品

3

指先で顔/体に塗る製品

4

香料関連製品

5

手(手のひら)で顔や体に塗る製品。主に洗い流さない製品

5A

手(手のひら)で体に塗るローション製品、主に洗い流さない製品

5B

手(手のひら)で顔に塗るフェイシャル保湿製品、主に洗い流さない製品

5C

手(手のひら)で手に塗るハンドクリーム製品、主に洗い流さない製品

5D

ベビークリーム、ベビーオイル及びベビーパウダー

6

口と唇を露出させた製品

7

ハンドコンタクトを毛髪に適用される製品

7A

ハンドコンタクトを毛髪に適用される洗い流す製品

7B

ハンドコンタクトをヘアに適用するための洗い流さない製品

8

肛門性器を露出させた製品

9

体と手が露出している製品で、主に洗い流す製品

10

ハンドコンタクトをメインとしたホームケア製品

10A

エアゾールを除くホームケア製品(エアゾール/スプレー製品を除く)

10B

ホームケア用エアゾール/スプレー製品

11

皮膚に触れる可能性があるが、香料が不活性マトリックスから皮膚に移行するのが最も少ない製品

11A

皮膚に触れる可能性があるが、紫外線にさらされることなく、不活性マトリックスから皮膚への香料の移行が最小限である製品

11B

皮膚に触れる可能性があるが、紫外線にさらされる可能性がある場合に、不活性マトリックスから皮膚への香料の移行が最小限である製品

12

皮膚に直接触れず、ごく少量または微量で肌に移行する製品

2.EU化粧品香精アレルゲン要求

2003年3月「EU化粧品指令」第7回改正(2003/15/EC)はEU化粧品食品科学委員会(元SCNFP、現SCCS)が鑑別した26種類の公認的な、接触性アレルギーを引き起こす可能性のある香料アレルゲンを付録III(化粧品使用制限物質リスト)に収録しました。また、洗い流さない化粧品中の濃度が0.001%以上、洗い流す化粧品で0.01%以上の場合は、化粧品ラベルの成分リストにこの物質の名称を表記しなければならないと規定しました。2009年11月、EU委員会は「EU化粧品指令」に基づいて「EU化粧品法規」(2009/1223/EC)を制定・発表し、この26種類の香料アレルゲンの規制を保留し、情報は次のとおりです。

番号

INCI名

中国語名

CAS番号

1

Amyl Cinnamal

戊基肉桂醛

122-40-7

2

Benzyl Alcohol

苯甲醇

100-51-6

3

Cinnamyl Alcohol

肉桂醇

104-54-1

4

Citral

柠檬醛

5392-40-5

5

Eugenol

丁香酚

97-53-0

6

Hydroxycitronellal

羟基香茅醛

107-75-5

7

Isoeugenol

异丁香酚

97-54-1

8

Amylcinnamal Alcohol

戊基肉桂醇

101-85-9

9

Benzyl Salicylate

水杨酸苄酯

118-58-1

10

Cinnamal

肉桂醛

104-55-2

11

Coumarin

香豆素

91-64-5

12

Geraniol

香叶醇

106-24-1

13

Hydroxyisohexyl 3-Cyclohexene Carboxaldehyde

羟异己基3-环己烯基甲醛

31906-04-4

14

Anise Alcohol

茴香醇

105-13-5

15

Benzyl Cinnamate

肉桂酸苄酯

103-41-3

16

Farnesol

金合欢醇

4602-84-0

17

Butylphenyl Methylpropional

丁苯基甲基丙醛

80-54-6

18

Linalool

芳樟醇

78-70-6

19

Benzyl Benzoate

苯甲酸苄酯

120-51-4

20

Citronellol

香茅醇

106-22-9

21

Hexyl Cinnamal

己基肉桂醛

101-86-0

22

Limonene

苎烯

5989-27-5

23

Methyl 2-Octynoate

2-辛炔酸甲酯

111-12-6

24

Alpha-Isomethyl Ionone

α-异甲基紫罗兰酮

127-51-5

25

Evernia Prunastri Extract

橡苔提取物

90028-68-5

26

Evernia Furfuracea Extract

树苔提取物

90028-67-4

2021年11月、EU委員会は(EU)条例2021/1902号を発表し、EU化粧品法規(EC)No1223/2009付録II、付録IIIと付録Vの関連規定を更新し、その中でアレルゲンブチルフェニルメチルプロピオンアルデヒド(CAS番号80-54-6)を使用禁止物質とし、法規は2022年3月1日から実施されました。

三.中国境内の化粧品香料の使用要求

(1)一般的な使用要求

「化粧品登録備案資料管理規定」に基づき、製品配合の香料は2種類の方式で記入でき、それぞれ以下の資料が提出できます。1.製品配合表に「香精」(香料)原料のみを記入する場合、香料中の具体的な香料成分の種類と含有量を提出する必要はありません。製品のラベルに「香料」の具体的な香料成分が表示されている場合、及び輸入製品の原包装のラベルに具体的な香料成分が含まれている場合、配合表の備考欄に説明しなければなりません。2.同時に製品配合表に「香精」及び香料中の具体的な香料成分を記入する場合、香料の原料メーカーが発行した該当香料に含まれる全ての香料成分の種類及び含有量に関する資料を提出しなければなりません。

2021年4月、GMPAは「化粧品安全評価技術ガイドライン(2021年版)」の公告(2021年第51号)を発表し、2022年1月1日から、化粧品の登録者、備案申請者が特殊化粧品登録または一般化粧品備案を行う前に、「技術ガイドライン」の要求に基づく化粧品安全評価を行い、製品の安全評価資料を提出しなければならないと要求しました。付録には、香料を評価する際に、国際香粧品香料協会(IFRA)の要求に合致すること、あるいは中国の香料標準(GB/T 22731-2017)に合致すること、原料サプライヤーが提供したその他の証明書類に言及しています。

2022年4月、中国食品薬品検定研究院が発表したFAQでは、香料の評価について質問に答えた際に、改めて次のように指摘しています。香料は類別原料であり、「使用済み化粧品原料目録(2021年版)」の「香料」の過去最高使用量を評価証拠として使用してはならず、「化粧品安全評価技術ガイド」の原則と要求に基づいて香料を評価しなければならず、あるいは製品に使用する香料が国際香粧品香料協会(IFRA)の実施要綱の要求に合致し、あるいは中国の関連国家標準に合致する証明書類を提供しなければなりません。

(2)子供用製品規制の動向

子供の利用者層の特殊性を考慮し、GMPAは2021年10月に発表した「子供用化粧品監督管理規定」の中で、子供用粧品は原料の安全、安定、機能、配合などの面から、子供の生理的特徴と結びつけ、使用する原料の科学性と必要性、特に香料、着色料、防腐剤及び界面活性剤などの原料を評価しなければならないが要求されています。

2022年に発表された「子供向け化粧品技術指導原則」(意見募集稿)では、香料を使用する子供用化粧品に含まれる香料成分に対するコンプライアンス要求が明記されています。

  • 子供用化粧品の配合はできるだけ香料を使わないか、少なくしなければならず、成分が複雑で26種類の感作性成分(注:EUの種類と同じ)を含む可能性のある原料を芳香剤として使用することを推奨しません。 26種類の感作性成分を含む香料を使用する場合、十分な安全性評価を行わなければならず、感作性成分の含有量が洗い流さない製品の中で0.001%以上であり、洗い流す製品の中で0.01%以上である場合には、ラベルに印刷して消費者に知らせる必要があります。
  • 香料は類別原料であり、「使用済み化粧品原料目録」中の「香料」の最高使用量を使用してはならず、製品に使用する香料が国際香粧品香料協会(IFRA)の実施要綱の要求に合致する、若しくは中国の関連国家標準合致する証明書類をを提供しなければなりません。製品配合表に同時に「香料」及び香料中の具体的な香料成分を記入する場合、香料の原料メーカーが発行した該当香料に含まれる全ての香料成分の種類及び含有量に関する資料を提出し、各香料成分に対して安全性評価を行わなければなりません。26種類の感作性成分を含む香料に対しては、十分な安全評価を行わなければなりません。
  • 26種類の感作性成分を含む香料を使用し、第3.2部分の要求に基づくラベルに警告用語を印刷しなければならない場合、「感作性成分を含む」を案内語とし、具体的な感作性成分の名称等を表記します。

(3)「日用香精」(GB/T22731-2017)

2017年に改訂された「日用香精」(GB/T22731-2017)は、2018年2月1日から推薦性標準として施行されます。香料の定義、要求、試験方法、検査規則、標識、包装、輸送、保管、賞味期限を規定し、各種類の液状日用香精の品質に対して分析評価するのに適しています。香料の中使用制限されている香料及び11類の香料入り化粧品の中の最高制限量及び香料中で使用禁止物質が規定されています。

「日用香精」(GB/T22731-2017)は、生産工場に出荷製品が標準に合致する要求を保証すべきであり、各ロットの出荷製品に品質合格証明書を添付しなければならず、同時に書面形による顧客に11類の香料入り製品または指定製品の中の最高使用量を知らせるべきと要求しています。

現在、全国香料標準化技術委員会(SAC/TC257)はすでに「日用香精」(GB/T22731-2017)に対して改訂を提出し、改訂中にIFRAスタンダード第49回改訂の関連内容を採用する予定があります。

「化粧品監督管理条例」及び化粧品に関する新規則の実施に伴い、政府の監督管理部門は化粧品原料に対する要求を徐々に厳格化しており、化粧品メーカーは、香料を添加した製品を製造する際に、香料を製品に使用することの合理性を十分に考慮し、製品が正常、合理的、予見可能な条件下で人体に対する健康リスクを十分に評価するとともに、製品ラベルの適合性を確保し、香料による感作リスクを可能な限り回避しなければなりません。