現在、β-ニコチンアミド・モノヌクレオチド(NMN)の法認可プロセスは、世界各国の主要市場で加速しています。企業がNMNの国際的なコンプライアンス状況を正確に把握できるよう、CIRSは米国、オーストラリア、EUにおけるNMNの申請・承認状況を整理いたしました。
米国:FDAがNMNをダイエタリーサプリメント原料として正式に再認可
2022年5月、尚科生物医薬(上海)有限公司(SyncoZymes (Shanghai) Co. Ltd.)のNMN原料が、米国で初めてNew Dietary Ingredient(NDI)としての認可を取得しました(NDI番号:1247)。しかし同年10月、FDAは医薬品排除規定を理由に、「NMNはダイエタリーサプリメントの定義に該当しない」として、内蒙古金達威薬業有限公司(Inner Mongolia Kingdomway Pharmaceutical Limited)によるNMNのNDI申請(NDI番号:1259)を却下し、同時に尚科生物のNDI認可も取り消しました。
その後、業界団体や関連企業による3年間にわたる請願と法的議論を経て、2025年12月2日、FDAはSyncoZymesのNMNに対するNDI認可の回復を正式に決定し、NMNがダイエタリーサプリメント原料としての法的地位を有することを明確に認めました。さらに2025年12月9日、FDAはSyncoZymesおよびKingdomwayの両社によるNDI申請に関する正式な回答書を公式サイト上で公開しました。
これにより、NMNは米国において、NDIとしてダイエタリーサプリメントに使用し、市場で販売・流通することが正式に認められました。
オーストラリア:TGAがNMNを承認、「補完医薬品成分」として流通可能に
オーストラリア薬品・医薬品行政局(Therapeutic Goods Administration,TGA)は、医薬品や医療機器などの品質、安全性、有効性を管理する規制当局です。オーストラリアでは、すべての医薬品の製造および流通・販売にあたり、TGAの承認取得、生産品質管理規範(GMP)への適合、ならびに市販前評価・登録が義務付けられていますTGAの承認を得ていない製品は流通が禁止されており、違反した場合は製品の廃棄や法的責任を問われることになります。
2025年12月10日、TGAはSyncoZymesのNMNを、補完医薬品に使用可能な原料リストに掲載することを正式に承認しました。承認文書によると、SyncoZymesのNMNはオーストラリアにおいて2年間の独占販売権(2025年12月10日〜2027年12月10日)を付与されました。有効成分として使用する場合、推奨摂取量は1日500mg以下とし、対象は成人に限定されます(妊婦および授乳婦は除外)。
*オーストラリアの「補完医薬品」は、一般的な治療薬とは異なり、ビタミン、ミネラル、ハーブなどの栄養補助食品を指します。日本の「保健機能食品」や米国の「ダイエタリーサプリメント」に近いカテゴリーです。

図1 NMN承認に関する規制文書のスクリーンショット
EU:中国企業がNMNのEUコンプライアンス取得を先行
(EU)において、NMNは「ノベルフード(新規食品)」(Novel Food)に分類されており、域内での販売には欧州食品安全機関(EFSA)による安全性評価と認可が義務付けられています。EUの公開検索プラットフォーム(Open EFSA)に掲載されている情報によれば、2025年12月24日時点で、NMNをNovel Foodとして申請した案件は合計6件確認されています。このうち、中国企業2社による申請がEFSAの安全性評価プロセスに進んでいますが、現時点でEUにおいて正式に認可されたNMN製品はまだありません。詳細な申請状況は表1の通りです。
表1 EUにおけるNMN新規食品申請の進捗状況一覧
受付番号 | 申請企業 | 提出日 | 現状 |
|---|---|---|---|
EFSA-Q-2022-00310 | LGD | 2022.05.11 | 申請者による取下げ(2025.09.29) |
EFSA-Q-2023-00552 | EffePharm (Shanghai) Co., Ltd. | 2023.08.22 | EFSAによる安全性評価中 |
EFSA-Q-2024-00099 | Hackshot s.r.o. | 2024.02.16 | 申請の無効判定(2024.09.13) |
EFSA-Q-2024-00420 | SyncoZymes (Shanghai) Co., Ltd. | 2024.06.26 | EFSAによる安全性評価中 |
EFSA-Q-2025-00116 | Borealis Pharma Manufacturing B.V. | 2025.01.28 | 申請資料を受理済み |
EFSA-Q-2025-00487 | Ralfs Bušmanis | 2025.08.21 | 申請資料を受理済み |
まとめ
2025年12月、NMNの国際的なコンプライアンス動向は大きな進展を迎えました:米国ではダイエタリーサプリメント原料としての法的地位が再確認され、オーストラリアでは条件付きながら補完医薬品成分としての市場参入が承認されました。これら二つの重要な進展は、NMN製品が世界の主流消費市場へ進出するための「青信号」と言えます。
一方で、EUの認可プロセスも着実に進行しています。今後、NMNの国際展開を計画している企業は、ターゲット市場における最新の規制動向注視し、十分な科学的根拠に基づくコンプライアンス申請を行うことで、市場の先機を掴むことが求められます。
