2019年1月1日から4月30日まで、EU食品及び飼料に関する緊急警報システム(RASFF)は総計47件の食品接触材料を通報した。中に、中国製品は38件があり、総件数の80.85%を占め、通報された主要原因は「物質の移行」である。又、2018年中国国家市場管理総局の食品関連製品品質国家監督抜き取り検査状況の通報によりますと、抜き取り検査された2,304ロットの製品の中に、不合格製品は102ロットがあり、総件数の4.4%を占める。不合格の主な原因は総移行量、メラミン移行量、ホルムアルデヒド移行量、鉛(Pb)移行量とカドミウム(Cd)移行量などの移行項目、感官や脱色などの物理化学項目である。食品接触材料の移行はよく食品安全問題を引き起こす。ここで、食品接触材料の物質移行と移行実験の関連内容に対して分析致し、「移行」を説明する。
1.物質移行及び移行実験
食品接触材料の移行とは、食品接触材料及び製品の構成或は成分が拡散、浸透、揮発、釈放などの方式で接触する食品の中に移行する過程を指す。移行量が限界量を超える場合は食品安全に影響を与える。移行実験は食品接触材料の移行状況を研究する重要な手段である。
移行実験とは、規定された条件下で食品接触材料及び製品の成分が接触する食品或は食品模擬物の中に移行した移行量を測定する実験である。
2.移行に関する法規
表1 移行に関する法規
標準番号 | 標準名称 |
GB 4806.1-2016 | 「食品安全国家標準 食品接触材料及び製品通用安全要求」 |
GB 31604.1-2015 | 「食品安全国家標準 食品接触材料及び製品移行実験通則」 |
GB 31604.8-2016 | 「食品安全国家標準 食品接触材料及び製品 移行総量の測定」 |
GB 5009.156-2016 | 「食品安全国家標準 食品接触材料及び製品移行実験予備処理方法通則」 |
GB 9685-2016 | 「食品安全国家標準 食品接触材料及び製品用添加剤使用標準」 |
3.物質移行の紹介
3.1 物質移行の紹介
表2 物質移行の紹介
項目 | 移行総量 | 特定移行量 | 特定移行総量 |
定義 | 食品接触材料及び製品から接触する食品模擬物の中に移行する非揮発物質の総量 | 食品接触材料及び製品から接触する食品或は食品模擬物の中に移行する1種或はある種の物質の量 | 食品接触材料及び製品から接触する食品或は食品模擬物の中に移行する2種或は2種以上の物質の総量 |
単位 | mg/dm2或はmg/kg 注:乳幼児専用の食品接触材料及び製品はmg/kgで表示 | mg/dm2或はmg/kg | mg/dm2或はmg/kg |
制限要求 | 相応した食品安全国家標準における移行総量制限量(OML)の規定に合致しなければならない | 相応した食品安全国家標準における特定移行制限量(SML)の規定に合致しなければならない | 相応した食品安全国家標準における特定移行総量制限量(SML(T))の規定に合致しなければならない |
限量由来 | 各製品の食品接触材料標準 | 1) 各製品の食品接触材料標準 2) GB 9685-2016 3) 国家衛生健康委員会による公表した補充公告 | 1) 各製品の食品接触材料標準 2) GB 9685-2016附属書B 3) 国家衛生健康委員会による公表した補充公告 |
例 | 現行の各製品の食品接触材料の標準に基づき、関連製品の移行総量制限量の要求は表3の通りである | 例:1,3-ビス(アミノメチル)ベンゼンを添加している食品接触用PEプラスチック
GB 9685-2016に基づき、最終製品における1,3-ビス(アミノメチル)ベンゼンのSMLは≤0.05 mg/kg | 例:ホルムアルデヒド及びヘキサメチレンテトラミンを添加している食品接触用コーティング
GB 9685-2016に基づき、最終製品における2種の物質のSML(T) ≤15mg/kg(ホルムアルデヒドの量で計算する)
ホルムアルデヒド及びヘキサメチレンテトラミンを単一に添加している食品接触用コーティングの場合、SML(T)も≤15mg/kg(ホルムアルデヒドの量で計算する) |
注.SMLもSML(T)も制限量の要求がない場合、移行量は60 mg/kg以上にしてはいけない。
表3 食品接触材料の移行総量制限量の要求
製品 | 移行総量 | 指標要求 | 実験方法 |
おしゃぶり | 移行総量/(mg/kg) 蒸留水、40℃、24h 4%(体積分率)酢酸、40℃、24h 50%(体積分率)エタノール、40℃、24h | ≤30 ≤60 ≤60 | GB 31604.8-2016 |
プラスチック材料及び製品 | 移行総量/(mg/dm2) | ≤10 | GB 31604.8-2016 |
注.乳幼児用食品に接触するプラスチック材料及び製品は実際使用している面積体積比率に応じて結果単位をmg/kgに換算し、且つ制限量は≤60 mg/kg | |||
紙と板紙材料及び製品 | 移行総量/(mg/dm2) | ≤10 | GB 31604.8-2016 |
注.食品接触表面に食用ワックスを覆っている紙と板紙材料及び製品は除外する。規定に基づいて選択された食品模擬物の移行総量は10 mg/dm2以上である場合、GB 31604.8-2016の5.5.2に基づいてトリクロロメタンエキスを検測し、その検測量に基づいて結果を判定する | |||
塗料及びコーティング | 移行総量/(mg/dm2) | ≤10 | GB 31604.8-2016 |
注.乳幼児食品に接触する塗料及びコーティングは実際使用の面積体積分率に基づいて結果をmg/kgに換算し、且つ制限量は≤60 mg/kg | |||
ガム材料及び製品 | 移行総量/(mg/dm2) | ≤10 | GB 31604.8-2016 |
注.乳幼児食品に接触する塗料及びコーティングは実際使用の面積体積比率に基づいて結果をmg/kgに換算し、且つ制限量は≤60 mg/kg |
3.2 その他の物質の移行
最終製品のコンプライアンスを確保するために、製造企業にとって、原料と補助原料に対して厳格な審査を行うだけではなく、最終製品製造過程中の汚染物或は存在してはいけないと明確的に規定される物質に対して検査しなければならない。
例
1)食品接触用のプラスチック包装材料及び製品におけるフタル酸エステル類物質の移行量の測定を行う場合、プラスチック包装材料及び製品のコンプライアンスを適当に評価することができる。
2)乳幼児専用の食品接触材料及び製品におけるビスフェノールAの移行量の測定を行う場合、製品の製造にビスフェノールAを使用しているかどうか、製造の過程中汚染が引き起こしたかどうかを判定し、食品安全リスクをよりよく防止する。
4.移行実験及び影響要素
移行実験は食品接触材料及び製品安全性を評価する重要な指標であり、食品接触材料が食品の中に移行した状況を判断することができ、食品接触材料及び製品における未反応のモノマーと添加物が食品の中に移行した移行量を定量的に計算することもできる。移行量は食品接触材料に使用される物質含有量、性質と製品特性以外、食品接触材料の実際使用状況にも関わる。移行実験を行う場合、以下の影響要素を合わせ、GB 31604.1-2015の関連要求に基づき、製品に適合の実験条件を選択して移行量の測定を行わなければならない。
よくある食品模擬物は4%(v/v)酢酸、10%(v/v)エタノール、20%(v/v)エタノール、50%(v/v)エタノール、植物油或は化学溶剤などがある。製品は乳及び乳飲料(全脂、脱脂或は部分脱脂乳及び濃縮乳など)のみに接触しようとする場合、GB 31604.1-2015に基づき、50%(v/v)エタノールを食品模擬物として選択しなければならない。
まとめ
上述した紹介によりますと、物質の移行検験とコンプライアンス分析に対し、関連部門は製造企業の原料と製造工程の監督管理を強化し、原材料から品質を制御し、製品の品質安全を保証しなければならない。その上、企業は製品のコンプライアンス評価を重視し、製品に基づいて必要な物質移行実験とリスク項目の監督と制御を行い、食品接触材料及び製品の安全とコンプライアンスを確保する。
英語版は こちら
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