2022年1月、ASEAN諸国、中国、日本、韓国、オーストラリア、ニュージーランドが参加する地域的な包括的経済連携(RCEP)協定が発効しました。RCEP発効後、加盟国域内の商品貿易の90%以上がゼロ関税に達成でき、その中、化学産業に関連するRCEP原産地規則の税番が1,000を超えており、化学工業製品の輸出入に有利です。RCEPの範囲内で、中国を含む多くの国がREACHに類似する化学品管理の法規制を実施しているため、こちらの国や地域に化学品を輸出される前に、化学品登録を行うことが求められる可能性が高いです。CIRSが作成した本ガイドラインは、RCEPによってもたらされる貿易メリットをよりよく楽しめるよう、RCEP諸国における最新の化学品管理法規制及び監督管理要求をまとめたものであります。
中国
2020年4月29日に生態環境部によって公布された改正の「新化学物質環境管理登記弁法」(生態環境部令第12号)が、2021年1月1日から施行されました。2010年1月19日に、旧国家環境保護部から公布された「新化学物質環境管理弁法」(環境保護部令第7号)は、これと同時に廃止します。12号令によると、「中国現有化学物質名録」(IECSC)に収載されていない物質を新規物質として、生産又は輸入の年間トン数によって、通常登記、簡易登記又は備案(新規化学物質登記)が求められています。生産者又は輸入者は新規化学物質を生産又は輸入する前に、新規化学物質登記を完成すべきです。「中国現有化学物質名録」に収載されている物質でも、新用途環境管理の対象物質としては、登記で許可された用途以外の用途に使用する場合は、新規物質として管理され、新たな用途の登記をする必要があります。
2020年11月17日、生態環境部は『「新化学物質環境管理登記指南」並びに関連附属表及び記入説明の公布に関する公告』(2020年第51号公告)を発表し、12号令の関連規定を細分化させ、具体的な実施要求を明確にさせ、新化学物質環境管理登記業務を展開する企業に重要な指導を提供しました。「指南」には、登記範囲、登記類型、登記流れ、申請資料の要求、ポリマーに関する特別規定、新用途環境管理登記、再登記、登記証の変更・撤回・取り消し、登記後の追跡管理などの内容が含まれます。新化学物質環境管理登記の要求を規範化させ、申請者及び代理人が責任と義務を果たすための指導を行います。
韓国
韓国の「化学物質の登録および評価に関する法律」(The Act on Registration and Evaluation of Chemicals)は、K-REACHとも呼ばれ、2015年1月1日から施行されました。K-REACHはEU REACH規則と類似し、化学物質の登録、有害性評価および授権と制限などの手段を通して、新規物質、既存物質及び川下製品の管理を実施しています。2015年7月1日、韓国環境部MOEにより510の登録対象となる既存化学物質リストが正式に発布されました。
2016年12月28日、韓国環境部(MOE)がK-REACH内容の改正を決定し、改正案が2019年1月1日から施行されました。既存物質の事前申告及びトン数によっての段階的な登録パターンが導入され、業界では大きな影響をもたらすことになりました。旧法案によって発布された既存化学物質登録対象リストに収載される510の物質は法案改正の影響を受けず、2018年7月1日以後、正式登録を完成しないと、韓国での生産又は輸入ができなくなります。
K-REACH改正案によりますと、次の化学物質を製造・輸入するもしくは製造・輸入しようとする者(製造者又は輸入者)は、製造・輸入前に登録・届出しなければなりません。
- 年間0.1t以上の新規化学物質
- 年間1t以上の既存化学物質
- 年間0.1t未満の新規化学物質は、環境部に届出必要
EU REACH規則の予備登録制度に類似し、韓国域外の製造者は事前申告を行うには、韓国域内の法人を「唯一の代理人」(OR)に指名することができます。
日本
日本において、化学品の管理については主にCSCLとISHLが関連しています。
日本の経済産業省・厚生労働省・環境省は共同で「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律」(化審法、CSCL)の改正案を発行しました。化審法は、2009年4月1日と2011年4月1日に2段階で施行されました。
化審法は新規物質の登録要求を定め、新規化学物質については、日本の製造業者と輸入業者は化審法の要求を満たさなければならず、その主な責任は以下の通り:
- 通常新規、低生産量新規、少量新規、中間物などの新規化学物質の届出を行う
- 年次報告書を提出する
新規化学物質でない場合は、一般化学物質、優先評価化学物質(PACs)、監視化学物質、第一種特定化学物質(Class I)、第二種特定化学物質(Class II)に分類され、種類によって異なる規制に管理されています。
CSCL規制を満たすことに加えて、新規化学物質の製造業者または輸入業者は、2011年に日本の厚生労働省によって発行された労働安全衛生法(ISHL)の要求にも満たさなければなりません。製品の製造または輸入の前に、企業は関連する申告を完了する必要があります。申告者は、日本における新規化学物質の生産者と輸入者です。また、申告の種類は、新規化学物質製造(輸入)届出と少量新規化学物質製造(輸入)確認です。
インドネシア
インドネシアには現在、新規化学物質の管理に関する規制はないが、主な化学品規制は「有害化学物質および有毒化学物質管理法規」です。該法の付属書に含まれている化学品のすべての生産、輸出入、輸送、移転、保管、使用と廃棄としては、ライセンスが必要です。
マレーシア
マレーシアには現在、新規化学物質の管理に関する規制もありません。主な管理規制は、2009年1月に提案され2011年に施行された「環境有害物質届出および登録規則」(EHSNR)です。該法に基づき、環境有害化学物質(EHS)は、必要な情報を提出します。環境有害化学物質とは、GHSで有害性の分類基準を満たす全ての物質であり、または国際的に見なされる高懸念物質のリスト若しくは禁止リストに含まれている物質のことです。EHS物質リストに記載されているかどうかに応じて、マレーシアの製造業者または輸入業者は、基本情報届出(EHS物質リストに記載される)または詳細情報届出(EHS物質リストに記載されていないがGHS有害性の分類がある物質)を行います。
フィリピン
フィリピンの化学物質を管理する規制は、「Toxic Substances and Hazardous and Nuclear Wastes Control Act of 1990"(RA 6969)」および環境天然資源省(DENR)によって発行された「Implementing Rules and Regulations of Republic Act 6969」(DAO 29)です。DAO 29は、RA 6969のガイダンス文書であり、輸出のみを目的としての輸入されたものを含め、フィリピン国内で輸入、生産、加工、保管、輸送、販売、使用、廃棄されるすべての規制されていない化学物質および混合物に適用されます。フィリピンの現有化学物質名録PICCS(The Philippine Inventory of Chemicals and Chemical Substances)に収載されていない化学物質は、新規化学物質に属するため、企業は、製造または輸入する前に、PMPIN届出を完了する必要があります。
PMPIN届出は主に2種類に分けられています。
- Abbreviated PMPIN:他の国での新規物質の生産/輸入活動が規制されておらず、申告者が物質に不当なリスクがないことを示すのに十分な情報を提出した場合
- Detailed PMPIN:申告者が物質の安全性を十分に証明できない場合、またはDENR-EMBが提出された情報により、物質の安全性を判断するのは不十分であると判断した場合。
輸入量が1000kg/年未満の新規化学物質については、SQI申告が必要です。
2019年11月8日、フィリピン共和国環境天然資源省(DENR)は、行政命令DAO 2019–18の「ポリマーおよび低懸念ポリマー(PLC)の予備製造/輸入申告の免除に関する規定」を発行しました。規定がすでに正式に発効され、EPA中央局は2020年1月6日にポリマー免除申請資料の正式な受領を開始しました。
タイ
タイは2020年に、11,476の化学物質を含む現有化学物質の最初の名録を発表しました。 この名録は、改正された有害物質法の実施に準拠するためのものです。2022年に、タイは有害物質法の関連する責任と義務を改正するかもしれません。有害物質法は、新規化学物質の登録と分類システムを導入し、規制の実施と監督を担当する特別な国家化学物質管理機関を設立するようです。
シンガポール
シンガポールの化学物質管理は、人や環境への有害性のある化学物質に管理重点を置いており、新規化学物質の管理要求はありません。 環境保護管理法(EPMA)の付属書の有害物質リストに記載されている物質の輸入、製造、または販売は、申告書の提出が必要です。
ベトナム
ベトナム化学物質インベントリーの増補申請は2020年5月30日で終了しました。 締め切り後、インベントリーは既存化学物質の最終リストと見なされますが、今最終リストがまだ正式にリリースされていません。さらに、ベトナム化学庁(Vinachemia)は、既存の化学法とそれに付随する指令113/2017/ND-CPを改訂する見込みです。ベトナムの化学物質に関する情報は、公式のデータベースシステムを介して照会できますが、リスト内の化学物質の最終的なステータスは、ベトナムの企業によって申請されたアカウントを介してのみ照会できます。公式データベースシステムでは、申告類化学物質のリスト、生産と取引が制限されている化学物質のリストなどに属しているかどうかを含むベトナムの化学物質管理状況を確認できます。
オーストラリア
オーストラリア工業化学品導入スキーム(AICIS)は、工業化学品の輸入と製造に関する新しい国内規制制度として、2020年7月1日にオーストラリア国家工業化学品届出・審査スキーム(NICNAS)に取って代わりました。化粧品専門用途のみに使われる成分も2020年7月1日から動物実験データの使用が禁止されています。
《オーストラリア化学物質目録》(AICS)は、《オーストラリア工業用化学品目録》(AIIC)(以下、目録と呼びます)に更新されました。 工業用化学品を輸入および/または製造する前に、企業は化学物質が「目録」に含まれているかどうかを確認し、並びにこれらの化学品が対応する使用条件を持っているかどうかを確認する必要があります。「目録」に記載されていない物質、または使用目的と使用条件が異なる物質は、新工業用化学品と見なされます。 免除対象に該当しなければ、新工業用化学品は、輸入および/または製造される前に、環境および人の健康に対するリスクについて管轄当局によって評価されなければなりません。
AICSに基づく義務
工業用化学品若しくは意図的に工業用化学品が放出される製品を商業目的でオーストラリアに向けて、輸入または製造(導入)する企業は、次のことを行う必要があります。
- 事業を登録し、料金を支払います(事業がNICNASにまだ登録されていない場合)。
- 各化学物質の輸入または製造(導入)を5つのカテゴリーの1つに分類します。
5つのカテゴリーは次のとおりです。1、「目録」に記載されている物質;2、免除;3、報告;4、評価;5、商業的評価。分類に応じて、オーストラリアへの化学物質の導入は、さまざまな作業の後に行われます。
報告および記録保持の要求
輸入カテゴリーに関係なく、各輸入者は各登録年の終わりに年次報告書を提出する必要があります。 これは、前の登録年度に輸入または製造した工業用化学品について、企業が行った届出であり、並びにその導入がオーストラリアの法律によって承認されたことを確認します。届出は、化学物質を導入するほうが記入し、AICISビジネスサービス部門を通じて提出する必要があります。 期日前に、AICISビジネスサービス部門は企業にリマインダー通知を発行します。
ニュージーランド
オーストラリアの規制とは異なり、ニュージーランドの有害物質および新生物法(HSNO)は、ニュージーランドの有害物質を規制するためにニュージーランド環境保護庁(EPA)によって策定されました。
HSNO法の要件に従い、ニュージーランドで生産され、または輸入されるすべての有害物質は、厳格な承認プロセスを完了する必要があります。 有害物質の製造業者および輸入業者は、物質を市場に出す前にHSNOの関連する承認を取得し、適切なラベル、包装、およびSDSを使用し、製品の有害物質含有量が許容範囲内(および禁止物質がないこと)であることを保証します。
まとめ
RCEPが発効した後、それは地域内の化学物質の輸出入貿易に便利をもたらすでしょう。 RCEP諸国では化学物質の登録と管理に大きな違いがあります。輸出する前に、企業は仕向国の最新の化学物質規制と要件を理解する必要があります。 規制により唯一の代表者(OR)の導入が許可されている場合、会社はORに実施を委託できます。輸入者のみが実施できる場合は、輸入者と協力して化学規制コンプライアンス作業を完了する必要があります。 この記事では、RCEP諸国における最新の化学物質管理規制と規制要件を包括的に要約します。このガイダンスは、企業の化学品の円滑な取引に役立ちますと、喜びます。
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