2025年7月2日、中国国家衛生健康委員会(NHC)は2025年第4号「三新食品」公告を発表しました。今回の公告は、5件の新規食品原料、9件の新規食品添加物、及び6件の新規食品接触物質を認可し、中に、「D-プシコース」は最も注目を集める新食品原料です。
一方で、D-プシコースは中国初めの遺伝子組換え微生物に関わる製造工程を用いた新食品原料であり、今回の認可は、合成生物学が食品原料分野で積極的な発展を示すシグナルと言えます。もう一方で、戦略的な甘味料原料として高い関心を集めてきたD-プシコースの公的認可は、中国国内市場の急速な拡大を促し、関連製品の処方選択を大幅に豊かにするでしょう。

今回の公告で認可したD-プシコースは二つの製造工程があります。
製造工程1
ブドウ糖またはショ糖を原材料として、大腸菌AS10(Escherichia coli AS10)で発酵、精製、乾燥などの工程で製造される。
製造工程2
果糖を原料として、使用許可が認められたD-プシコース-3-エピメラーゼによる触媒変換後、脱色、分離、精製、結晶などの工程で製造される。
中に、製造工程2のD-プシコース及びその使用許可が認められたD-プシコース-3-エピメラーゼは、CIRSより代理申請を行いました。そのD-プシコース-3-エピメラーゼは、2023年5月に認可され、中国初めて認可取得したD-プシコース-3-エピメラーゼです。
D-プシコース:優位性が突出した低カロリー甘味料、戦略的な代用糖として期待
D-プシコースは、天然由来の低カロリーなヘキサケトン糖であり、代用糖としての価値は国際的に高く評価され、食品・飲料・調味料などで広く利用されています。生産技術も成熟しており、以下の3つの優位性が注目されています。
- カロリー摂取抑制、糖質コントロール支援
経口摂取されたD-プシコースの大部分は小腸で吸収され、70%が尿中に排泄されます。未吸収分の一部は大腸に到達しますが、腸内細菌による発酵で生成される短鎖脂肪酸はごく少量で、残りは便中に排出されます。ブドウ糖代謝に関与せず、エネルギーも産生しません。
- ショ糖に近い風味、多様な応用が可能、理想的な代用糖
穏やかでクリーンな甘味、溶解性が高く、ステビオ配糖体やエリスリトールなどの代用糖が抱える「後苦味」や「溶解性の低さ」といった課題を解決できます。代用糖の中で唯一キャラメリゼーションが可能で、パンやビスケットなど焼き製品の風味向上に貢献します。
- 生理機能性発揮、健康ニーズへの対応
D-プシコースは、代謝に関与しない特性は「0糖」表示に最適ですが、さらに血圧調節や糖尿病・肥満・齲歯リスク低減といった臨床的メリットが研究で示されています。「健康減糖」トレンドが加速する中、D-プシコースは多様な健康ニーズに応える製品開発を可能にします。
これらの優位性から、D-プシコースは中国市場でも急速に普及し、関連製品の処方選択を大幅に拡大すると予想されます。
中国におけるD-プシコースの規制対応の歩み
今回公告の前に、D-プシコースは米国・カナダ・豪NZ・日韓などで既に認可されました。中国では7件の申請受理記録(中に、1件は海外製品の申請)があり、産業化の主流は生物酵素転化法です。中核酵素であるD-プシコース-3-エピメラーゼも3件が承認(全てはCIRSより代理申請)されており、複数企業が成熟した生産技術と量産能力を有することが分かります。
一方、中国での認可には長い時間を要しました。これは当局が製造工程・品質規格・摂取量などを徹底的に審査した結果であり、安全性に対する慎重的かつ科学的な姿勢の表れと言えます。
CIRSの考え
D-プシコースは、極低カロリー、優れた水溶性、食品の官能品質の維持・向上、そして多様な生理機能を兼ね備えた新世代の代用甘味料として、許可承認後は食品業界で幅広く活用されることが期待されます。更に、中国初めの遺伝子組換え微生物製造工程を用いた新食品原料として、今回認可は、合成生物学関連企業にとって大きな励みとなり、業界のイノベーションと産業化に新たな契機をもたらすと予想されます。
CIRS食品事業部について
CIRS食品事業部は、2012年に創立され、1,000社の国内外食品関連企業の為にワンストップの法規制対応をサポートします。中国三新食品(新食品原料、新規食品添加物、新規食品接触物質)、合成生物学(遺伝子組換え)三新食品、米国GRAS認証、EU Novel Food 認証、中国保健食品、中国特殊医学用途調整食品(FSMP)などの分野において数多くの成功実績を持ちます。
詳しくはCIRS食品事業部法規制対応一覧にご参考ください。
