Self GRASの廃止が再び議題に?米国FDAによるGRAS規則改正の最新動向
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2025年9月4日、米国食品医薬品局(FDA)は、2025年春統一アジェンダ(Unified Agenda)の一環として、GRASに関する規則改正案を提示しました。本案は、連邦規則集(CFR)第21編の第170部および第570部におけるGRAS規定の修正を目的としています。

これは、今年3月に米国保健福祉省長官が提唱した「Self GRASの廃止」という考えに基づき、FDAが発表した更なる措置であり、業界内で広く注目を集めています。

改正案の要点

  1. GRASに該当すると主張するヒト用食品および動物用飼料の物質に対し、GRAS通知の提出を義務付ける。
  2. 免除対象となる物質:既に規制によりGRASとして収載・確認されている物質、あるいは既にGRAS通知を提出し、FDAから「異議なし」レターを受け取っている物質。
  3. FDAは、一般公開用のGRAS通知リストを作成し、継続的に更新しなければならない。
  4. GRASに該当しないと判定するプロセスについて、FDAは明確化を行う。
  5. 現在、FDAは2025年10月に本提案規則の制定通知を公表することを計画しています。

FDAによるSelf GRAS廃止への課題

一つの重要な問題は、米国FDAにSelf GRASを取り消し、企業にGRAS通知の提出を強制する権限があるかどうかという点です。

新規の食品添加物成分については、「米国連邦食品・医薬品・化粧品法(FD&C法)」により、企業はFDAに食品添加物申請を義務的に提出することが求められており、これは法律によってFDAに与えられた権限です。しかし、1958年のFD&C法改正に基づき、GRAS物質は米国食品添加物の定義範囲から除外されています。これは、FD&C法が、企業にGRAS通知の提出を強制する権限をFDAに与えていない可能性を示唆しています。

もしFD&C法が改正される前に、FDAがGRAS通知を「任意」から「強制」に変更した場合、米国議会や法的な観点からの異議申し立てに直面することが予想されます。

関連する司法事例

2017年、米国食品安全センターおよび環境保護基金などの非営利団体がFDAを提訴し、「FDAが企業によるSelf GRASを容認し、FDAや公衆への情報開示を求めないのはFD&C法に違反する」と主張しました。これに対しFDAは、「現行のGRAS規則はFD&C法に適合している」と反論しました。最終的に裁判所はFD&C法はGRAS認定の強制開示を要求しておらず、FDAの「任意開示制度」を認める解釈は合理的であると判断し、2021年にFDAが勝訴しました。

このような背景から、FDAがSelf GRAS廃止に踏み切るには、まず議会の権限付与が必要と見られています。

将来への影響

司法上の疑義に加え、新規則が義務化された場合、大量のGRAS通知が押し寄せた際に、FDAが審査リソースを確保できるかという課題もあります。これらの問題があるため、「Self GRASの廃止とFDA GRASの強制提出」という措置は、短期的には多くの課題と不確実性に直面することになります。

しかし、この議題がFDAの正式アジェンダとして取り上げられたことから、今後、Self GRASだけでは不十分となり、米国政府はより透明性・強制性の高い監督体制へ移行する意向を示していると解釈できます。これは、米国食品システムにおける業界の自主権と規制当局の監督のバランスを再構築する動きと言えます。

企業が取るべき対応策

FDAは提案規則を公表する予定であり、「連邦官報」に正式に掲載されれば、一般からの意見提出が可能になります。CIRS米国法人は、この動向を継続的に追跡し、関連企業に対しタイムリーに専門的な解説を提供してまいります。今後を見据え、企業には以下の対応を推奨します。

  • 既存のSelf GRAS資料を再点検し、コンプライアンス評価やデータギャップ分析(特に安全性データ)を実施する。
  • Self GRASとFDA GRASは、本質的に「手続きの違い」であり、品質に差があってはならないため、同一基準での準備を行う。
  • 上記を踏まえ、必要に応じて早期にFDA GRAS通知の準備を進めることを検討する。

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