2025年、米国議会において食品の「一般に安全と認められる」(GRAS,Generally Recognized As Safe)に関連する3つの法案(S.2341、H.R.4958、S.3122)が提出されました。これらの法案はいずれも、GRAS評価プロセスの改善、物質の安全性、および自己認定(Self GRAS)の規制要件の見直しに焦点を当てています。
現在、これら3つの法案はいずれも提出直後の初期段階にあります。各法案の主な内容の概要は以下の通りです。
2025年米国議会におけるGRAS関連3法案の主な内容比較
検討内容 | S.2341 | H.R.4958 | S.3122 |
|---|---|---|---|
Self GRAS認定権限の廃止 | はい | いいえ | いいえ |
FDAへの通知を伴わないSelf GRAS結論の無効化 | はい | はい | はい |
FDAの「異議なし回答書」を取得済みのGRAS物質に対する祖父クローズ(既得権条項)の適用 | はい※ | はい | 可能性あり |
既にSelf GRASを取得済みの物質に対する祖父クローズ(既得権条項)の適用 | いいえ | 可能性あり | いいえ |
GRAS通知の義務化 | はい | はい | はい |
GRAS結論に対する新たな安全基準の設定 | はい | はい | いいえ |
現行のGRAS通知制度の維持 | いいえ | はい | いいえ |
新規GRAS物質に対する市販前承認の要求 | 該当せず | はい | いいえ |
新規GRAS物質に対する市販前届出の要求 | 該当せず | 該当せず | はい |
再評価の必要性 | はい | はい | 要求がある場合 |
GRAS通知の評価および再評価に関する手数料 | いいえ | はい | いいえ |
GRAS通知における社会一般からの意見募集 | はい | はい | いいえ |
※ただし、新たな安全基準に基づく再評価が必要。
上記の三つの法案の内容要旨
① 上院第2341号法案「2025年 安全かつ無毒な食品確保法(S.2341)」
- 提出日:2025年7月17日
- 提出者:マサチューセッツ州選出・民主党上院議員 Markey、Warren
ニュージャージー州選出・民主党上院議員 Booker
コネチカット州選出・民主党上院議員 Blumenthal
現在のステータス:法案提出済み
法案の主な内容
- 本法案の施行日以降、食品成分はSelf GRAS(自己認定)を通じてGRASステータスを取得することはできません。
- GRAS「祖父クローズ(既得権条項)」の規定:本法案の施行前に米国FDAへGRAS通知が提出された物質については、引き続きGRASステータスを認めるとしています。
- Self GRASを取得済みであっても、FDAにGRAS通知を提出していない物質については、本法案の施行前に届出がなされない限り、「祖父クローズ(既得権条項)」は適用されません。
- GRAS通知における安全性評価(発がん性、生殖発生毒性、および累積的影響を含む)を明確化します。
- 「祖父クローズ(既得権条項)」に基づき免除されたGRAS物質についても、定期的な再評価を実施することを義務付けています。
② 下院第H.R.4958号法案「2025年GRAS法案(H.R.4958)」
- 提出日:2025年8月12日
- 提出者:ニュージャージー州選出・民主党下院議員 Pallone
- 現在のステータス: 法案提出済み
法案の主な内容
食品添加物の定義からGRAS免除条項を削除し、GRAS物質を食品添加物として再分類した上で、他の食品添加物申請と異なる独立の規制ルート(GRAS通知)を確立します。食品への使用実績がない物質、または法案施行前に食品への新たな用途が承認された物質については、新たな強制的プロセスに従ってGRAS通知を提出することが求められます。
上記の規定に基づき、公布日以降、食品成分のSelf GRAS認定は不可となり、FDAへの届出が義務付けられます。
- GRAS通知における安全性評価(発がん性、生殖発生毒性、および累積的影響を含む)を明確化します。
- 新規GRAS物質、または既存のGRAS物質の新たな想定用途を市場に投入する前に、米国FDAから「異議なし書簡(No Objection Letter)」を取得しなければなりません(実質的な市販前承認制度)。
- GRAS「祖父クローズ(既得権条項)」の規定:本法案の施行前に米国FDAへGRAS通知を提出し、かつ「異議なし書簡」を受理した物質については、引き続きGRASステータスが認められます。
- Self GRASを完了しているものの、FDAへGRAS通知を提出していない物質についても、「祖父クローズ(既得権条項)」に基づく免除が適用される可能性が示唆されています。
- 承認済みの食品添加物、GRAS物质(免除物質を含む)、着色料、および以前に承認された物質について、定期的な再評価を実施する必要があります。
- FDAは、すべてのGRAS物質に対して市販前通知を任意で要求することができ、施行前にGRAS通知として提出されていないSelf GRAS物質を含む「GRAS物質リスト」を作成する権限を有します。
- 本法案では、食品添加物およびGRAS物質の初回評価および再評価にかかる費用について規定しています。
③ 上院第S.3122号法案「2025年改正版FDA法案(S.3122)」
- 提出日:2025年11月6日
- 提出者:カンザス州選出・共和党上院議員 Marshall、
アラバマ州選出・共和党上院議員 Britt
フロリダ州選出・共和党上院議員 Scott
- 現在のステータス:法案提出済み
法案の主な内容
- 食品添加物の定義からGRAS免除条項を削除し、GRAS物質を食品添加物の定義における例外事項(着色料、農薬、および以前に承認された物質と同等の法的位置付け)として再分類します。
- 米国FDAに対し、新たなGRASリストの策定および維持に関する手続きの構築を要求します。
- GRAS物質の所有者に対し、FDAへの届出を義務付けます(法規制施行時点ですでに使用されているGRAS物質については、施行後2年以内に通知を提出する必要があります。施行後に新たに追加されるGRAS物質については、食品への最初の使用の120日前までに市販前届出を行う必要があります)。
- GRASリストに掲載されていない物質、または掲載可否の審査中である物質は「不安全」とみなされ、当該物質を含む食品は「不良食品(adulterated)」と判断されます。
- FDAは、提出されたGRASリスト掲載申請について、180日以内に掲載許可または却下の判断を行う必要があります。却下された物質については、申請者が再審査を請求することができ、FDAは補足資料の受領後180日以内に最終決定を下すことが求められます。
- 市民による請願、州政府当局による申請、またはFDA独自の主導に基づき、既にリストに掲載されているGRAS物質、承認済みの食品添加物、または承認済みの着色料の使用の安全性について再評価を実施する為のプロセスを構築します。
まとめ
米国議会では長年にわたり食品規制に関する様々な立法提案がなされており、GRAS物質に関連する議題は例年注目される重点事項の一つであり、今年初めて議論されたものではありません。
なお、現在S.2341、H.R.4958、S.3122の3法案はいずれも「提出」段階にある初期フェーズにとどまっており、今後、米国上下両院を通過するか否か、また大統領の署名を経て正式な法律として成立するかについては、依然として不確実性が高い状況です。GRAS制度の今後の動向について、CIRSは引き続き関連情報をモニタリングし、企業の皆様が規制環境の潜在的な変化をタイムリーに把握できるよう努めてまいります。
CIRS(CIRS Group)について
CIRS食品事業部は2012年に設立され、専門的な米国GRAS認証技術チームを有しています。米国GRAS認証、米国NDI認証、中国三新食品(新食品原料、新食品添加物、新食品接触物質)、合成生物学(遺伝子組換え)食品成分、EUのNovel Food、中国保健食品、中国特殊医学用途調製食品などの申請分野で多くの成功事例を持ち、対応経験は業界の先端に立ちしています。
CIRSは米国に完全子会社を持ち、米国FDAの関連認証を対応しています。CIRS国際認証技術チームは経験豊富で、日本語で1対1の認証相談コンサルティングを提供できます。
詳しくはCIRS食品事業部法規制対応一覧にご参考ください。
关键词:GRAS規則、GRAS評価プロセス、Self GRAS廃止、米国FDA
标签推荐:食品、US、GRAS
