EU:6年越しの欧州REACH規則の抜本的見直し計画(REACH 2.0)を正式に見送りへ
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抜粋:2026年4月27日、欧州連合は、約6年間にわたり進めてきたREACH規則の抜本的見直し計画(REACH 2.0)の見送りを正式に発表しました。今回の決定は、業界からの強い反発と影響評価の課題をとしたものであり、EUは今後、現行規則の簡素化と法執行の強化へと方針を転換します。これにより、企業は当面、抜本的な改訂への対応を迫られるリスクは回避されましたが、PFASに対する制限措置については、今後も継続して推進される見通しです。

2026年4月27日、欧州委員会の環境・海洋・漁業担当委員であるJessika Roswall氏は、欧州議会の環境・公衆衛生・食品安全委員会(ENVI)の会合において、化学品の登録、評価、認可および制限に関する規則(REACH規則)の全面改訂を中止することを明言しました。6年間にわたり準備が進められ、世界中の化学品業界から高い関心を集めていた「REACH 2.0」計画の正式な中止に伴い、規制強化に対する一時的な「一服感」を得る形となりました。

会議の内容

ENVI会議の中、Roswall氏は、注目を集めているペルフルオロアルキル化合物およびポリフルオロアルキル化合物(PFAS)に対する制限提案について、今年末までに策定される見通しであることを明かしました。その上、REACH規則の全面改訂計画について、「今はREACH規則を改訂すべき時期ではない。欧州は現在、確実性と予測可能性を必要とする局面にある」と意見を示しました。

全面改訂は見送られたものの、Roswall氏は、今後の立法方針を現行条項の「簡素化と近代化」にシフトさせることを強調しました。欧州委員会は、欧州議会と欧州連合理事会による共同立法手続きを経ることなく、「コミトロジー(委員会手続き)」を通じて、REACH規則の技術的な微修正を行うことが可能です。更に、Roswall氏は、税関や市場における取り締まりを強化し、不適合品や不適合物質の排除に向けた法執行を徹底する方針を示しました。

REACH 2.0 改訂の背景

REACH 2.0への改訂は、2020年にEUが掲げた「欧州グリーンディール」の一環である「持続可能な化学物質戦略」の重要施策として当初提案され、現行規則の枠組みを抜本的に見直すことを目指していました。これまでに開示されていた主な改革案は以下の通りです。:

  • 登録制度の見直し:10年間の登録有効期限の設定、高懸念物質(SVHC)の登録ドシエの再提出義務化、数量に応じたポリマーの届出・登録。
  • 評価とコンプライアンスの強化:欧州化学品庁(ECHA)による不適合な登録の取り消し権限、類似物質の優先評価権限の付与。
  • 認可プロセスの簡素化:「不可欠な用途(Essential Use)」の概念の導入、認可候補物質リストの運用最適化。
  • 制限プロセスの精緻化:リスク優先順位付けの改善、危険有害性カテゴリーに基づく管理対象の拡大。
  • 執行および監査の強化:EUによる監査権限の新設、税関管理および国境を越えた調査の強化。
  • サプライチェーンのデジタル化対応:電子安全データシート(eSDS)やデジタル製品パスポート(DPP)の導入による行政負担の軽減。

しかし、上記の改訂計画は強い反発を受けていて、2025年9月、欧州委員会の規制精査委員会(RSB)は、REACH 2.0改定提案の影響評価報告書に対し否定的意見を表明しました。同年11月に欧州委員会が発表した内部計画文書(SEC(2025) 2543)の議題からも、すでにREACH規則の改定は除外されていました。

REACH 2.0 計画見送りの理由

  1. 規制精査委員会(RSB)による否定的意見:RSBが指摘した主な課題は次の通りです。先ず、「健康・環境リスクの管理不足」であり、化学品ドシエにおける主要な危険有害性情報の欠落、用途・暴露データの不完全さ、ポリマーリスクへの対応不足、化学物質安全性評価(CSA)がすべてのリスクを網羅していない点が挙げられました。次に、第二に「規制手続きの効率性の低さ」であり、新たな制限規則の策定に時間を要しすぎること、認可プロセスが煩雑で代替物質への転換を効果的に促進できていないこと、意思決定の迅速性に欠ける点が問題視されました。最後に「コンプライアンスと法執行の抜け穴」として、登録ドシエがREACH規則の要求を満たしていないケースや、加盟国間での法執行レベルの格差、特にオンライン販売を経由した輸入製品の適合性への懸念が指摘されました。
  2. 欧州化学品業界の強い反発と競争力低下への懸念:ドイツ化学工業協会(VCI)は改定に対し明確な反対の立場をとり、「今、業界の競争力に必要なのは規制の休息空間であり、さらなる規制の衝撃ではない」と主張しました。欧州の化学業界は近年、エネルギーコストの高騰や世界的な安価製品との競争激化により、利益が圧迫されています。欧州最大の化学品生産国であるドイツ政府も、2026年3月26日の報告書においてREACH規則の改定に反対を表明し、現在の経済および地政学的環境下での改定は、欧州の競争力に「ネガティブな連鎖反応(悪影響)」をもたらすと警鐘を鳴らしました。


CIRSの分析

総合的に判断すると、EUはREACH規則に関わるすべての改革を「永久に放棄」したわけではなく、現段階において「抜本的な見直し(大改訂)を再開しない」ことを明確にしたと言えます。当初広く予想されていた「大規模修正版REACH」は棚上げされ、今後の政策の方向性は「簡素化、近代化、的を絞った技術的アップデート、および法執行の強化」という形で進められる可能性が高まっています。

企業としては、「10年間の有効期限」や「ポリマーの全面登録」といった要求に直面するリスクは一時的に回避されましたが、手続きの簡素化や技術附属書の調整を通じた「現行法ベースの取り締まり強化」の傾向は今後も継続します。また、PFASなどの特定物質に対する制限の動きはむしろ加速している点に留意が必要です。

企業の対応策

1、登録状況とサプライチェーン情報の再確認:自社が保有する既存のREACH登録ドシエおよびサプライチェーン情報が、完全かつ追跡可能であり、最新の用途と一致しているかを再確認してください。

2、ECHAおよび法規制動向のモニタリング:制限、認可、SVHC、およびPFASに関する欧州化学品庁(ECHA)の最新動向を継続してモニタリングし、製品が最新の規制要件を満たしているか確認するとともに、計画的な製品のアップデート(代替物質への転換等)を進めてください。

3、取り締まりへの対応力強化:EU当局による税関検査、抜き打ち検査、および現地の顧客からのコンプライアンス調査に対するレスポンス能力(迅速な情報提供体制)を向上させてください。

CIRSグループは、REACH規則の最新動向を継続的にフォローし、企業の皆様へタイムリーなコンプライアンス支援を提供してまいります。

https://multimedia.europarl.europa.eu/en/webstreaming/committee-on-environment-public-health-and-food-safety-extraordinary-meeting-envi-extraordinary-comm_20260427-1900-COMMITTEE-ENVI

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