2026年8月15日の『中華人民共和国生態環境法典』の正式施行に伴い、中国の新規化学物質環境管理登記制度は重大な制度転換を迎えました。生態環境部は同日をもって従来の「新規化学物質環境管理備案(届出)」の新規受付を停止し、従来の備案対象事項を全面的に「登記手続き」へと一本化する方針を明示しました。
行政サービスシステムも8月14日夜にモジュールの切り替えを完了しています。今後、企業が申請資料を提出する際には、「申請用途情報」および「機密保持の必要性に関する説明書」の追加提出が必須となりますので十分な注意が必要です。
■ 背景:第12号令の改定と備案(届出)手続きの廃止
2026年8月4日、生態環境部弁公庁は『新規化学物質環境管理登記に関する通知』(環弁固体函〔2026〕301号、以下『通知』)を発令し、「『生態環境法典』を徹底し、新規化学物質環境管理登記制度を健全化するため」、2026年8月15日をもって新規化学物質環境管理備案の受付を停止することを明確に打ち出しました。
『通知』によると、従来の『新規化学物質環境管理登記弁法』(生態環境部令第12号、以下『弁法』)において備案の要件を満たしていた企業・各種機構は、今後、製造・輸入の開始前に生態環境部へ「新規化学物質環境管理登記申請表」、第10条第3項の規定に適合することを証明する資料、および既に把握している環境・健康危害特性や環境リスクに関するその他情報を提出する必要があります。所管部門はこれらを「簡易登記の手続きおよび処理期限」に準じて受理・審査します。
この見直しの背景には、2026年8月15日に施行された『生態環境法典』において「備案」という申請形態が廃止されたことがあります。これにより、これまで備案として管理されていた低数量物質(年間製造・輸入量が1トン未満)および一定の要件を満たすポリマー類物質は、今後はすべて「登記管理」の枠組みへ統合されます。なお、備案の廃止方針については、同年6月11日に公開された『新規化学物質環境管理登記弁法(改定意見募集稿)』においても既に盛り込まれていました。
■ 登記システムの切り替え:備案モジュールは8月15日より「登記申請」へ移行
生態環境部の行政サービスシステムの表示によると、2026年8月15日より、新規化学物質環境管理登記システム内の「備案申請」モジュールは切り替えを完了し、正式に「登記申請」モジュールへと変換されました。これにより、システム上でも備案の提出受付は完全に終了し、申請窓口は登記手続きへ一本化されたことになります。

■ 備案から登記への移行に伴う提出資料の4つの主要変更点
以下の2つの区分:
- 年間製造量または輸入量が1トン未満の新規化学物質
- 新規化学物質モノマーまたは反応体の含有量が2%を超えないポリマー、または低懸念ポリマー(PLC)
については、従来の備案申請時に求められていた基本資料の要件自体は維持されています。しかし、備案から登記手続きへ移行したことにより、実務上、主に以下の4つの変更点が生じています。
一、 海外企業(中国国外企業)による申請の不可化
6月11日公開の『改定意見募集稿』で示されていた通り、代理人制度の撤廃に伴い、中国国外の企業は申請主体になれなくなりました。これは『生態環境法典』の規定との整合性を図るための措置です。
二、 1申請につき1物質限定への変更
従来の備案手続きでは、1セットの申請資料で複数の化学物質を同時に届け出ることができ、一度に数十種類の物質のコンプライアンスを完了させることが可能でした。しかし、登記手続きへの移行後は、1回の登記申請につき申請可能な新規化学物質は1種類のみとなります。
三、「申請用途情報」の追加提出の義務化
登記への移行に伴い、申請時には登記要件に従って具体的な用途を明記する必要があります。本来、『弁法』においても登記証の記載事項に「申請用途」が含まれており、用途情報は登記審査およびその後の環境リスク緩和措置の伝達における重要な基盤とされています。これまで備案を利用していた企業にとって、用途情報の追加提供は新たな必須要件となります。

四、物質名称・構造情報の秘密保護要求における「必要性説明書」の提出
『弁法』の規定に基づき、提出資料に商業秘密が含まれ、機密保持を希望する場合は、登記申請時にその旨を申し出るとともに「商業秘密保護の必要性に関する説明資料」を提出する必要があります。そのため、化学物質の名称や構造などの保護を主張する企業は、必要性説明書を申請書と一緒に提出しなければならず、提出がない場合は登記の公開要件に従って情報が開示されることになります。

■ おわりに
備案から登記手続きへの移行は、これまで簡単な手続きで市場に投入できていた低数量の新規化学物質についても、今後はより厳密かつ完全な登記管理チェーンに組み込まれることを意味します。
2026年8月15日以降に申請を行う企業は、登記窓口からの申請や簡易登記手順による審査に対応するだけでなく、「申請用途」および「情報保護の必要性説明書」(該当する場合)を提出資料として不備なく揃える必要があります。該当する企業におかれましては、申請中および今後申請を予定している物質を早急に整理し、用途説明や情報保護資料の事前準備を進め、円滑なコンプライアンス移行を確保されることを強く推奨いたします。
新規化学物質の登記管理に関する法規制制度の改定も今後急速に進むと予想されるため、関連企業におかれましては今後の動向を最優先で注視されることをお勧めいたします。
CIRSグループでは、今後も関連法規の改定動向を追跡し、お客様へ専門的な法解釈および中国新規化学物質コンプライアンスに関する最適なソリューションを提供してまいります。
最新の法規制解説記事につきましては、CIRSグループ公式サイトおよびChemradarにて随時発信しております。また、今後弊社が主催する新規化学物質法規制改定に関するセミナーへの皆様のご参加を心よりお待ちしております。
