飼料・ペットフード原料の米国進出:FAP/GRAS/AFIC/SRISの4大経路コンプライアンスQ&A
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基礎概念

Q:現在、米国の新飼料原料・飼料添加物にはどの4つのコンプライアンス申請経路がありますか?

2024年覚書失効後、以下4つの経路が確立されています。

  • FAP(食品添加物請願):FDAの法定承認手続き。21CFR連邦法規に収載され、権威性が最も高い。手続き期間は1‑3年、コストが高い。
  • FDA GRAS(一般に安全とみなされる物質通報):法定手続きであり、FDAから「異議なしレター」を取得する。Self GRAS(廃止が予定)とFDAへ提出するFDA GRASに分かれる。
  • AFIC(動物食品成分コンサルテーション):FDAが2024年に導入した任意の暫定相談手続き。コンサルテーション完了レターが発行され、連邦レベルでの法執行は行われない。企業の非公開データを活用可能。
  • SRIS(動物食品成分科学的審査プログラム):AAFCOによる第三者科学審査ルート。審査通過後AAFCO OP(公式刊行物)に収載され、専門家審査料の支払いが必要。

旧制度:2024年以前は企業がAAFCO原料定義によりOP収載を目指し、FDAの裏付けを得ていました。覚書失効に伴い旧ルートは終了し、AFICとSRISの2つの新ルートに移行しています。

Q:4つの経路それぞれの申請成功の判断基準は何ですか?

  • FAP:FDAが法規を公布し、物質が21CFR連邦法規に正式に収載される。
  • FDA GRAS:「FDA has no questions(FDAに異議なし)」の異議なしレターを受領する。
  • AFIC:FDAよりコンサルテーション完了レターを取得。FDAの裁量権により法執行しないことを意味し、公式承認ではない。
  • SRIS:審査・投票が通過し、物質がAAFCO OP刊行物に正式収載される。

Q:4経路の主管機関、費用、認知度の簡易比較

経路

主管機関

公的費用

主な成果

連邦・州レベルでの認知度

FAP

FDA

ほぼ無し

連邦法規に収載

連邦+州で認められ、権威性最高

FDA GRAS

FDA

無し

FDA異議なしレター、後にOP収載可

連邦レベルで認可。OP収載後は州レベルの認知度も向上

AFIC

FDA

無し

コンサルテーション完了レター

連邦レベルで執行なし。州レベルの認知度は低い。後にOP収載により州の課題解決が可能

SRIS

AAFCO

審査料1万~3.5万米ドル

AAFCO OPに収載

各州はOPを広く認める。FDA連邦レベルでは審査・承認されていない

SRISの現状:2025年10月受付開始。2026年08月20日時点でSRISによる申請通過事例はなし。AFICはこれまで8件の相談があり、1件がコンサルテーション完了回答を得ている。

 

経路選定と企業適合性

Q:企業はどのように申請経路を選択すればよいですか?

  • FAP:採用する企業は少ない。期間が長く安全性試験への投資が大きい。連邦法規による裏付けが必須の場合に適する。
  • FDA GRAS:総合的なバランスに優れ、法的地位が高い。異議なしレター取得後OP収載が可能で、連邦・州両方で認められる。デメリットは資料の大部分が公開されるが、核心的な製造プロセスパラメータは秘密保持申請可能。注意:Self GRASはFDA新規規則により廃止予定。
  • AFIC:非公開データを保護し、速やかに連邦レベルの見解を得たい企業に適する。リスク:OPに収載されるまでは米国各州の監督当局の姿勢が不確実。後続でOP収載を並行して推奨。
  • SRIS:汎用的な大宗飼料原料に適する。企業データの非公開保護はなく、OP収載後は業界全体が当該定義を利用可能。特許・独自製法の原料には不向き。

Q:SRIS経路は申請企業のデータ・特許保護を行ってくれますか?

行いません。SRISの成果物は公開された原料定義であり、申請企業に紐づかないです。他社でも物質がOPの定義に合致すれば直接使用可能なので、企業独自の製造プロセスや特許を保護できません。申請前にAAFCOと事前協議し、物質がSRISに適合するか評価することを推奨します。

Q:企業の非公開データを保護したい場合、どの経路を選べばよいですか?

  • AFIC:物質名・使用条件のみ公開。卷宗全体は公開されず、企業の非公開データを全て活用可能。
  • FDA GRAS:資料全体が公開されるが、核心的な製造プロセスパラメータは秘密保持の処理が可能。
  • SRISは不適切。公開された汎用原料定義が作成され、企業固有の保護は得られない。

Q:どの経路が最も速く、米国市場へ早期参入できますか?

AFIC、SRISはFAP、GRASより全体的に手続きが速い。

  • AFIC:FDAの任意相談手続き。非公開データを使用可能、公開文献必須ではなく比較的迅速。
  • SRIS:従来ルートの2倍の審査速度を標榜しているが、AAFCOの年2回の会議による投票・OP収載を待つ必要があり、会議周期に左右され不確実性が存在する。

 

Animal Food GRAS(飼料GRAS)特集

Q:飼料GRAS(Animal Food GRAS)とヒト用食品 GRAS(Human Food GRAS)の共通点・相違点は何か?飼料GRASの公開事例数が大幅に少ない理由は?

共通点として、

法的枠組みは同一でGRAS制度に属する。Self GRAS廃止の新規規則は飼料・ヒト食品の両方に適用される。

相違点として、

  • 審査部門

ヒト食品GRASはCFSANが審査。飼料GRASはFDA獣医薬センターCVMが審査。

  • 安全性評価の重点

ヒト食品:ヒトに対する安全性を主に評価。

飼料GRAS:①対象動物(鶏、魚、豚、犬猫など)の安全性。②対象動物が食用動物(家きん・水産物などヒトが摂食する動物)の場合、動物を介したヒトの間接曝露リスクも評価必須。ペット(犬・猫・馬)の場合はヒトへの間接リスク評価は不要、ペット自身の安全性を評価。

Q:飼料GRASの事例が少ない理由?

  • 歴史的に飼料企業はGRASではなくAAFCO OP経路を活用してきた。
  • 飼料は対象動物ごとの試験が必要で複雑度が高い。
  • 飼料には複数のコンプライアンス経路が存在するため、企業がGRASを選択するとは限らない。

Q:Self GRAS廃止予定が飼料原料に与える影響。FDA GRASの通報義務が免除されるケースはあるか?

新規規則は動物用飼料にも適用され、今後企業による自己評価のSelf GRASのみでは認められず、FDAへGRAS通報を提出する必要かもしれません。

免除対象:既に連邦法規に収載済み、FDA GRAS異議なしレター取得済み、AFICコンサル完了レター取得済み、2024版AAFCO OPに収載済みの既存原料。

注意:FDAが認めるのは2024版OPのみ。SRISにより新たにOPに収載された物質についてFDAは現在認可の意思表示を行っていません。

Q:飼料GRAS申請において、毒性試験・対象動物試験は公開文献を引用可能か?実施済みの試験報告を米国申請に直接利用できるか?

  • FAPは独自の完全データ要求が高い点を除き、GRAS、AFIC、SRISはいずれも公開文献を毒性試験、対象動物の有効性・耐量データの根拠として引用可能。公開文献が不足する場合に試験を実施する。
  • 米国に試験ガイドラインは存在するが、完全準拠は強制ではない。
  • 完了した試験があれば米国申請に活用を検討可能。これから試験を実施する場合は米国ガイドラインを参考に試験を設計し、データの共用を目指すことを推奨。

飼料申請ではラット毒性試験よりも、実際に給与する対象動物の耐量・安全性試験の優先度が高い。ラットの毒性試験で魚、豚、犬猫などの対象動物試験を代替することはできない。

Q:ヒトに安全な原料が、なぜ飼料用動物にそのまま使用できないのか?

種ごとに代謝機能・耐量に大きな差があるためです。例:キシリトールはヒトに安全だが犬に対して猛毒。チョコレートに含まれるテオブロミンは犬に毒性を示す。

ヒトに安全=動物に安全ではなく、実際の給与対象動物ごとに安全性評価を実施する必要があります。

Q:飼料申請の対象動物はどのように分類され、評価上の違いは何か?

大きく2区分に分かれる。

  • 食用動物(鶏、豚、水産物などヒトが摂食する動物):動物自身の安全性に加え、当該動物をヒトが食した際の物質残留によるヒトの安全リスクを評価する。
  • 非食用動物(犬、猫、馬などペット):ペット自身の安全性のみ評価。ヒトの摂食リスク評価は不要、対象動物ごとの安全性評価は必須。

 

AFIC・SRIS実務と連邦‑州の監督のギャップ

Q:AFICコンサルテーション完了レターを取得すれば万全か?米国の州政府の要件は考慮する必要があるか?

連邦レベルのFDAは執行を行いませんが、米国各州は独立した飼料監督権限を持っています。多くの州がAAFCO OPを基準として運用しており、AFICレターのみでOP未収載の物質に対する各州の姿勢は不確実です。

解決策:AAFCOはAFIC完了済み物質をAAFCO審査に提出し、投票を経てOP収載することを受け入れ可能と表明しています。OP収載により州レベルの参入リスクを解消できます。企業は複数経路を並行して申請することも可能です。

Q:SRISによりOP収載されることは、FDA連邦レベルの承認・認可と同じ意味か?

同じではありません。

  • 2024年覚書失効前の旧OP(2024版)はFDAの裏付けがあり、FDAが安全性を認めています。
  • SRISはAAFCOによる独立第三者審査であり、FDAはSRISによりOPに追加された物質に対し正式な認可の表明を行っていません。FDAの提案規則では認めているのは 2024版OPのみで、後続の新版OP(2026版)については記載されていません。

現状:州の監督当局はOPを認めるが、連邦FDAの態度は明確ではなく、業界とFDAの監督上のギャップとなっています。

Q:SRISの費用は1万、2.5万、3.5万米ドルの3段階があるが、自社がどの段階に該当するかどのように判断するか?

SRISは新規ルートのため、申請前にAAFCOに物質基本情報を提出し、AAFCO側が資料の複雑度を評価し、費用区分、コスト、期間を確定します。

一般的な区分:

第1段階:既存AAFCO原料定義の修正

第2段階:新規AAFCO原料定義、対象動物種が1‑2種類

第3段階:新規AAFCO原料定義、対象動物種が3種類以上

上記金額は基本料金であるため、事前協議はSRIS申請における必須手続きとなります。